其ノ四
◎続々、書き込みの話
オーケストラ作品で、著作権がまだ存在する作品を演奏する場合は、貸し譜のパート譜を使用します。楽譜出版社がレンタルしています。賃貸料はとても高いと聞きます。貸し譜に書き込みをしたときは普通消して返却しますが、時々消し忘れがあったりすることがあります。
以前、ストラビンスキーの作品をやった時、使用したレンタル譜にハングル文字の書き込みを見つけたことがありました。韓国を回ってきたのですね。
もちろんハングルは読めないのですが、何を書いているのだろうと、いろいろ想像が膨らんで楽しい思い出です。
バレー団の公演は団がオーケストラのパート譜も持って来ることがあります。
特にバレーは同じ作品でもいろいろなバージョンがあり バレー団によっても独特の演奏順や省略や挿入曲があったりするので、一つの楽譜だけではリハーサルが恐ろしく面倒なことになってしまいます。有名な“白鳥の湖”も作曲者自身もいろいろなパターンを書いていますし、フィナーレの終わり方も千差万別です。それをいちいち書き込みでだけで対応していると、ほとんど仕事になりません。昔はそんな大変な仕事も多いものでした。“ジゼル”も作曲者が書いたオリジナルに他の作曲家が書いた別の曲を挿入したり差し替えたりして上演することが多く、書き込みだけでは到底対応できません。以前、ジゼルの第二幕でチェロの大ソロがあるバージョンを一度だけ弾いたことがありますが、あれは一体誰が書いたバージョンでしょうか?マニアの方、教えてください。
かなり前、ロシアのバレー団の公演で演奏したことがありましたが、その時も楽譜はバレー団の楽譜で演奏しました。そのバレー団独自のバージョンで印刷された楽譜で、コピーも持ち帰りも禁止、書き込みも厳禁でした。それだけ楽譜は団にとって大切なものなのですね。
音符が大きく(暗いオケピットでは重要なことです)書き込みも少なくとても見やすい楽譜でした。
あッ!また鉛筆の芯が折れました。
おわり
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