今日はチェロの弓遣いによって発生する問題について、レッスンを通じて最近考える事をお話しします。
弦楽器は皆さんご存知のように、弓を弦に擦り付けて音を出しますね。その時、弓を右方向に動かす時は下げ弓、左に動かす時は上げ弓と言います。英語ではダウンとアップ。ドイツ語ではややこしいのですが、アップとアウフ。アップが下げ弓になります。
その時、言葉の意味通り、本来なら下げ弓は力を落とす、上げ弓は弓を引き上げるとイメージになります。
下げ弓では力を落とすので自然的であり、解放、解決、安心、または息を吐く、などのイメージになり、上げ弓では物を引き上げるのですから自ずと意思の力が働きます。ですからその時の心情は、緊張感、期待感、憧れ、そして息を吸うイメージがあります。
ヴァイオリンやヴィオラの場合、楽器を構える時の姿勢からくる独特の特徴として、とくに高音弦を弾く時にはまさに弓の上げ下げをイメージを実感しやすいのですが、チェロやコントラバスでは、どうしても、楽器を立てて演奏する姿勢により、何も考えずに弾くと、弓の運動とは単なる左右の運動のみとなってしまいます。つまり、上げ弓も下げ弓も全く同じ音のイメージ、よほど意識しないとそれぞれの弓が持つ個性がなくなってしまいます。
そこで、私がレッスンをしていて気がついたのは、上げ下げやアップダウンという言葉を別の言葉に変えてみればどうかと考えたのです。
端的に言えば、下げ弓ダウンを「引く」、上げ弓アップを「押す」または「押し込む」という表現に。
この「引く」や「押す」の表現では楽器の違いに関係なく、弓の方向がもたらす個性やイメージを、生徒にも理解しやすいということをレッスンをしている時に気がついたのです。
因みに、ノコギリを挽く場合、西洋のノコギリでは押す時に木は切れ、引く時には力が抜けます。食事のナイフでもそうです。それと似てますね。押す時に力が要る、つまり気力が要るわけです。
日本のノコギリは反対で、引く時に切れます。
ヴィオラ ダ ガムバの弓遣いや弓の上げ下げのイメージはまた異なりますので、それはまた別の機会でお話ししたいと思います。
川内昌典
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