◎其ノ二
弓の毛

チェロを弾く皆さんは、だいたい何ヶ月くらいの間隔で弓の毛を張替えておられますか?弾く量にもよりますが、アマチュアの場合でも最低半年に一度は張替えるのが理想的です。プロはもっと頻繁に張替えます。
中には毛が少なくなり、フロッシュの近くが手垢で真っ黒になっていても使い続けている人を見かけますが、それでは良い音が出せないのは勿論、バランスが悪くなり本来その弓が持つ性能まで殺しかねませません。新鮮な毛で弾くと弓の性能も一ランク、アップさせるものです。
ではどんな毛が良いのか。
これはある程度楽器職人に任せないと仕方がない事なのですが、ゴムのように伸びる毛は良くありません。使っているうちに早く伸びて、フロッシュが端に寄ってしまい、弓のバランスが悪くなるだけでなく、弓の本体に親指が当たりそこが擦り減ってしまうことになります。やはり均質な毛を張りましょう。
弓一本分の毛を束にしたものが高価ですが安心です。
その他、中国から最近粗悪な馬毛が輸入されているようですから、注意が必要です。いろんな馬の毛の屑を集めて一束にしたものですから、毛一本一本の伸び率や性質が異なるため、使っていくうちに一本また一本と締まりなく伸びていきます。こんな毛を張ればば音のシャープさが損なわれ、もう演奏や練習どころではありません。そこでどうすれば良いか。
馴染みの楽器店を持っておき、どんな毛が入っているか常に情報を得、一番良い毛を張ってもらうしかありません。

◎毛替えのテクニック

弓はチェロ奏者にとって、まさに身体の一部です。毛は直接弦と接触し音になる部分ですから神経質にならざるを得ません。毛の張り方ひとつで演奏が成功したり失敗したりするといっても過言ではないのです。
そこで大切なのは心から信頼できる職人と知り合いになること。
同じ職人でもその時の条件で素晴らしく張れた時とそうでもない時の差は少なからずあります。それぐらい毛替えは難しくデリケートなものなのです。
私個人的には、毛に沢山水を含ませ櫛で何度も梳く張り方は好みません(とても綺麗に張れますが)。梳くことで馬毛のキューティクルまで剥がしてしまう恐れがあるからです。
良い状態で張られた弓は、嬉しくて限界を超えても使い続けたくなるものです。

◎弓の取り扱い

まず、気軽に譜面台に弓を乗せてその場を離れない事です。
引っかけられて弓を落とし傷をつけられてしまうことがあります。その他、譜面台に弓の毛を引っかけ何本も一度に切ってしまうことがあります。その時は毛全体を替えなければならず、弓一本分無駄にしてしまいます。

また同じ毛には、いろいろな種類の松脂を混ぜて塗らない方が良いでしょう。(無頓着な人は結構多いものです。)