神様・マルセル・モイーズ!

音楽高校の授業に不満を抱いていた私の前に現れたのはフルートの神様と言われるマルセル・モイーズでした。もちろんレコードでですが。
高校二年生の頃フルート界では、フルートの神様マルセル・モイーズが講習会のため来日するという話題で持ち切りでした。その頃私はSPレコードの復刻版でその素晴らしい演奏を聴いていたので、これは是非とも聴きに行かねばと思い、はるばる東京まで二泊三日の旅に出たのです。
19世紀末に生まれたモイーズの音は何と言えばいいのか、一言で言って、フルートであっていわゆるフルートの音ではないのです。むしろヴィオラに近い音。あれはどう聴いても“ピーッ”という“風”の音ではありません!もっともっと密度の高い音。どんな吹き方をしているのか、これは実際にこの眼と耳で確認するしかありません。

東京まで行かねば!

実際の講習会では当時すでにかなりな高齢だったため長時間吹くことはできなかったのですが、講義の間吹くことがありました。
その音の美しいことたるや!
笛の音を超越した音、想像を遥かに超えた音と音楽。腰を抜かしそうになりました。
今でもその講習会のテープは私の宝物として持っています。
私にとって人の演奏を聞いて最初に感動した瞬間です。