◎7 フィナーレ
プレスト
やっと第四楽章に到達しました。
合唱団やソリストの皆さん、お待ちどおさま。曲はオーケストラのプレスト(速く)のティュッティ(総奏)で始まります。なんという不協和音でしょう!因みに第一交響曲ハ長調の出だしも不協和音で始まります。ハ長調の下属調であるヘ長調の属七(ソシレファ)の和音で始まります。第一交響曲ですでにこの手法は使われていたのです。 こんな前衛的な手法、一体誰が考えつくでしょうか?
第一番はハイドンやモーツァルトの影響の元に書かれたと一般的には言われますが、とんでもない!ハイドンやモーツァルトにもこのような斬新な発想はありませんでした。ティュッティに引き続きチェロとコントラバスでレシタティーフ(詠唱)が演奏されますが、この部分では一般的に楽譜やテンポはまったく無視されます。出だしはプレストなのにレシタティーフは大抵とても遅く演奏されるのが普通で、どうして急にテンポがなくなるのか私としては昔から不思議に思っていました。
1825年にロンドンで演奏するためにわざわざベートーベンにテンポなどを確認するため彼の元に赴いた指揮者のジョージ・スマートはこのレシタティーフには歌詞がないがどのように弾けばいいのかとベートーベンに質問しました。すると彼は言下に、常に厳格なテンポで演奏されなければならないと答えたのです。実際楽譜にもインテンポ(テンポ通りで)と書かれています。
ベートーベンが言うようにプレストのままインテンポで弾けば次に同じくプレストのティュッティにもすんなり移行出来るのに、別のテンポを取ると、結果として歓喜のテーマに至るまでが統一性のない音楽になりやすい、又はなってしまうのです。指揮者は皆悩むのですが、どうして皆このようにわざわざ難しくひくのでしょうか? その元凶は何と言ってもヴァーグナーでしょう!彼こそ髪を振り乱し汗まみれになって指揮する現代指揮者の元祖なのです。
彼はベートーベンを尊敬し、第九も何度も指揮しました。尊敬するあまりでしょうか、彼はよりベートーベンの意図を効果的に表現するためベートーベンが書いたスコアに手を加えてしまったのです。得に加筆が顕著に見られるのが金管楽器です。
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