其ノ八
エンドピンの普及は演奏技術を格段に向上させたといわれる訳ですが、実際演奏する時の音の面から考えるとどうなのでしょうか。音色の面、芸術面からみるとすべてにおいてはたして本当に向上したといえるのかどうなのか?
チェリストの方は経験されたことがあると思いますが、エンドピンは材質によってまったく響き方が異なります。床の材質によっても違ってきます。私は現代のチェロの響きはそれらのエンドピンという異物によって異質な歪められたものになってしまっているのではないか、本来持つ豊かな響きを止めてしまっているのではないかと常に思うのです。エンドピンを付けて弾いた場合ではその楽器が本来持つ音色はわからないということになります。エンドピンの材質によって弾き方まで変えなければならないなんてあまりにも不安ではありませんか。現代のチェリストはエンドピンというものは本来、音色を犠牲にして便利さや音量だけを追求した産物であると再認識すべきだと思います。すべての意味において現代の物が勝り昔の物が劣るとは限らないのです。音色を大切にして、もう一度エンドピン無しで弾くという選択肢もあってもいいのではないでしょうか?
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