◎其ノ二
素材選びから調理へ
どんな料理を作るにしても料理のセンスや腕前は大切ですが、まず良い食材とよく切れる包丁などのしっかり手入れされた調理器具を準備することが大切です。
音楽で言えば良い楽譜と正確に調整された楽器ということになるでしょう。それ以前に素材としての才能は大切でしょう。
また料理を作るには清潔な環境も大切なように、音楽にもしっかり練習できる環境や良い演奏会ができる環境、すなわち良い会場や良い聴衆は不可欠ですが素材として何よりも大切なのはその人の努力です。才能はその次だと思います。
まず料理の素材から見ていくと食材ならできるだけ新鮮な物、丁寧に育てられた物を選ぶこと、これに尽きるでしょう。これだけでも料理の出来栄えは格段に違うはずです。
それ以前に良い出汁を取ることが大前提ではないでしょうか。
音楽で考えてみると、まず出典のはっきりした楽譜を選ぶことです。校訂者の意見が入り過ぎている楽譜もよくありません。
楽譜の校訂者といえば、演奏家という場合が多く、自分ならこう弾くとかこんな指使いで弾くという情報が書かれ過ぎていることがほとんどです。これは原典を売りにしている出版社の楽譜にも多く見られる傾向です。それら校訂者の意見は修正液で消して使うと、より作曲者の意見が見えてきやすくなるものです(楽譜は汚くなるのですが)。原典版といわれる楽譜は校訂者の意見がわかりやすく書かれているため、修正する箇所がわかりやすいのですが、自筆譜(自筆譜が失われている場合もあります)と写筆譜、初版楽譜、との間にもかなりの差異があることが多く、それがごちゃまぜに書かれていることも多く、どの意見を取り入れるかで演奏される音楽にもかなりの差が出てくるのが普通です。
こうして楽譜を選び準備することは料理における良い出汁を取ることと相通じるものがあります。
音楽における素材とは、良い楽譜は勿論、その人の才能や適性という問題もあるでしょう。でもます大切なことは普段からの努力ではないでしょうか。
いくら良い才能を持っていても普段の努力を怠っていると、出来の悪い料理のようになってしまうでしょう。
少し劣る食材でも普段から鍛え上げられた腕で料理すれば、その素材の持つ限界以上のものが引き出され素晴らしい料理になるはずです。
音楽とまったく同じですね!
楽器も料理と同じように普段から腕を磨き、包丁を研ぐように整備しておかなくてはなりません。切れない包丁で料理しても料理の腕前は決して上がりません。鳴らない楽器でいくら練習しても上達しないように。
続く
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