◎ 第4番
アレグレット
この曲は重音奏法を中心に書かれています。3音、4音のダブルストップも頻繁に出て来るので、曲想はどちらかと言えば、ニ短調という調性と相まって、とても激しくエネルギッシュなものになりがちです。しかし楽譜を見てみると最初にはフォルテなどのディナーミクが全く無く、ただアレグレットと書かれているだけです。
アレグロにレットなどの語尾が付けば優雅さが要求されます(他にはアダージェットのエットやアンダンティーノのイーノなど)。したがってこの曲の出だしの4音のダブルストップは2音ずつに分割するよりもバロックの弾き方のように、アルペジオ(分散和音)のように弾いた方が優雅で美しく、またそう弾かれるべきでしょう。
◎第5番
この曲にはアレグロ・コモードという表示があります。
あくまでも気楽な雰囲気で弾かれるべきなのですが、この曲には技術的にとても難しい弾き方が要求されますので、なかなか気楽にとはまいりません。
テクニックとしてはジェッタート、またはジュテと呼ばれるボウイングが使われます(ヘンレの原典版にはジェッタートとは表示されてはいませんがリコルディ版にははっきりジェッタートと表示されています)。
これは、いくつかの音をワンストロークで弓の張力を利用して跳ねるようにして弾く奏法で、1音ごとに弓を止めるいわゆるピケタートとは異なります。
曲の出だしは分散和音ですが、高い音から下へのジェッタートはとても難しいですね!その反対で下から上へは楽ですが。弓の跳躍には“きっかけ”又は原動力が必要です。アップの場合、右手小指で弓を引き戻してやるようにすれば弓は自然に跳躍を開始します。
中間部分はメロディーとジェッタートで弾かれる伴奏部分とがくっきりと分離されなければなりません。
◎ 第6番
とてもゆったりとした曲。変イ長調で始まりますが中間部では変イ短調に転調。何とフラットが七ツもあるではないですか!
中間部でも変ハ長調に転調したりで音の取り難さには頭を抱えます。ではどうしてこんな弾きにくい調子を選んだのでしょうか?
それはフラットなどの調号が多い調独特の音色を出すためです。つまり解放弦が共鳴しない分、チェロの響きは暗く虚ろになります。その効果を狙っているのです。したがって、この曲をむやみに明るい音で弾く努力にはまったく意味がないことになります。
調号をイ長調にしてチューニングを半音下げれば弾き安いのでは?それは素人考えです。取り難い音を苦労して取る努力をすることこそがこの曲が持つ独特の雰囲気を醸し出すのですから。
続く
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