◎其ノ一

理想のレッスンとは一体どんなものでしょうか?
今回は私が自分自身、レッスンに対して目標とし求めるものについてお話ししてみたいと思います。

私が音楽を習いはじめた頃や音大で勉強したこと、あるいは他の先生のレッスンを見てみて、それらは自然とレッスンとはこうあるべきだと切実に考えさせてくれます。

以前にもお話ししましたが、私が音楽生活を始める第一歩はピアノを習うことでした。小学五年生の時でしたが、その頃にはすでに将来音楽家になりたいなと、漠然とではありますが思っていました。小学校の卒業文集にも、そんなことを書いた記憶があります。
その時は音楽家になるためにはまずピアノを習わなければならないと自分なりに考え、町のピアノ教室に通いはじめました。
やがて中学に上がると、迷わず吹奏楽部に入りました。いろいろ楽器を触った結果、最終的にたどり着いたのはフルートなのです。
今から思うと、あの頃の二三年が今の音楽的な考えが芽生える実際のルーツになっているように思います。
なぜかといいますと、中学でとても立派な先生に出会ったからです。その先生こそ音楽教科の教師で音楽クラブの顧問の先生でもあった上村信雄先生なのです。
良い師との出会いこそが将来を決めてしまう、と言っても過言ではありません。特に最初に出会う先生は大切です。
その後もいろいろな先生に出会いましたが、今から思えば、中学の頃出会った上村先生こそが自分にとっては音楽的な考え方の基礎を作ってくれた最高の師ではなかったか、そんなことを最近よく考えます。
先生と生徒、これはあくまで相性の問題に尽きます。
評判の良い先生が全ての生徒に対して本当に良い先生でいられるかは疑問です。そのような先生には出会わない人もいるでしょう。少なくとも影響を受け、自分の将来を決定づけた先生に出会うことが出来た。その意味で私は幸運でした。

とにかく先生は徹底して、“音楽は楽しむものだ”ということを身をもって教えてくださったのです。
どんなに芸術的に難しいことを言ったって、最終的には楽しく面白くなければ何の意味もありません。まず続きません。作曲者にも根底にあるものは、まず音楽する楽しさであったり、芸術に対する興味や好奇心、それだけしかないと思います。
あと付け加えるとすれば、美に対する畏怖の念、音楽することに生きる意味を見出だした、とでも言えるでしょう。しかしそれも後付けの理屈でしかないと思います。

つづく