◎其ノ一
アインザッツとは?
アインザッツとはドイツ語で休止後の歌い始め又は弾き始め、という意味ですが、音楽では大雑把にいえば、アンサンブルをする時、相手に合図を送ることを指します。わかりやすくいえば、よく子供が“せーのー”とか“サンハイッ”とか言って歌を歌ったり何か人と物事を同時に始める時に掛け声をかけあうでしょう?あれがアインザッツです。
普通、アンサンブルではその曲に応じた身振りで息を取り(ブレスを取り)、相手に曲の開始やフレーズ(息、及び句読方)の始まりを示します。また自分がその曲を理解する上でもとても大切なものです。
しかしこれら子供が無意識ににやっていることが、大人になるとできなくなるということはどういうことでしょうか。
これは多分アインザッツが問題になることがあまりにも少な過ぎだからだと思われます。ただ何となく合わせているだけなのです
音楽をやる上で基本的に大切なことなのに、一見、音には関係がないように見えるからでしょう、プロオーケストラでもアインザッツは指揮者とコンサートマスターだけの仕事だとばかり彼らに任せきりになっているのは不思議な現象です。
これは音大などで(いやそれ以前に)難しい曲や複雑な指使いは叩き込まれるのに、曲やフレーズの始め方と終わり方は殆ど教えない、という変な教育方法にまず原因があると思います。
これは料理教室で手の込んだ料理の作り方は教えるのに正しい箸の使い方は教えないようなものです。または難しい学問は叩き込むのに社会人として大切な最低限のマナーは教えないという現代の教育を見るようで、うすら寒い気分です。
音大では難しい曲を教える以前に曲の始め方、終わり方をまず徹底的に叩き込むのが先決だと思うのです。そんなこと音大に入る前に勉強してこいという方もいるとは思いますが、それは責任逃れです。そもそも大抵の学生は社会に出てそんなに難しい曲ばかり弾く可能性など殆どないのです。基本をしっかり教えるのが音大の努めだと思います。またこれが出来ればどんな難しい曲も殆ど出来上がった、理解できたも同然だからです。
では具体的にその方法を考えてみましょう。
続く
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