◎第六話
脱力法
私達がチェロを演奏する時、身体にはどんなことが起こっているのでしょうか。
特に初心者の場合、必死になって肩が上がり、腰や脚部にも力が入ってしまい、身体全体がガチガチに強張ってしまっていることが多いですね。
それはチェロの初心者だけに限らず長時間同じ姿勢をとり続けるプロの奏者やデスクワークが多い一般社会人にも共通した現象で、身体の変調をきたしそれが悩みの種になることもあります。
そんな時にはどうすれば良いのでしょうか?やはり身体の緊張を解いてやらなければなりません。
初心者にただ単にもっと肩の力を抜いてとか、もっとリラックスしてと言うだけでは緊張など絶対に取れるものではありません。
そこでまず観察するのは、頭のてっぺんから骨盤まで重心がズレていないかどうか。
人は必死になって物事をやろうとすれば必ずといっていいほど首が前に出ているものです。頭の重さをまっすぐ下に降ろし骨盤に乗せるようなイメージで構えると、とても身体が安定しリラックスします。
それでも身体が緊張して固くなるという人は口を開けて弾いてみてください。人は必死になって何かをやろうとしている時、必ず歯を食いしばっているものです。ときには下唇を噛んだりすることさえあります。上下の歯を離してやれば肩に力を入れようがありません。自然に脱力できます。これはコンサートで緊張した時にも応用できます。是非試してください。ただしコンサートでは唇を閉じることを忘れないように!
それでも身体全体が凝り固まるという頑固な方は、椅子に腰掛ける時、両足裏の全面は床に着けず、両足の裏同士を着けるようにして置きます。つまり足の側面を床に置くようにして構えるわけです。
人は必死の時、脚を踏ん張っているものです。その踏ん張りを解放してやるのです。
ただし、このやり方は見映えが酷く悪いのでステージ上では使用できません。以前このやり方を舞台でも実行しているチェリストが、聴衆から酷い不評を浴びせられたことがあります。あくまで普段の練習での脱力するイメージ作りのためだけに使用してください。
芸術作品を演奏する場合、常にリラックスさえしていればそれでいいのか?そんなことはありません。むしろ強い精神的、肉体的な緊張を強いられ求められることは多いものです。そんな時は、以上の禁止したことをあえてやれば良いわけです。
終わり
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