其ノ七
時代は19世紀中期、ロマン派時代もその特徴を確実に見せはじめたころチェロの活躍の場も広がりをみせ始めました。バロック時代では伴奏楽器としてしか扱われなかったチェロは次第にバイオリンと同等の役割を担わされることが多くなってきたのです。その頃、ベルギーのフランソワ・セルヴェ(1807ー1866)というチェロ奏者によってエンドピンが発明されたということになっています。その頃までチェロはガンバのように両ふくらはぎで支えるか、小さな箱に楽器を乗せて弾いていたのですが、彼の大型のチェロではふくらはぎで支えるには大きすぎ、結局ひざを痛めてしまいました。当時、脚を痛めるチェリストがとても多かったそうです。それで彼は当時の有名なバイオリン製作家のヴィオームの所に駆け込み木製の棒を付けてもらった。それがエンドピンの始まりみたいです。
その彼の大型のストラディバリのチェロは現在アメリカのスミソニアン博物館に保管されており、その楽器を用いてアンナー・ビルスマが録音したバッハの組曲やセルヴェの作品集のCDはほんとに素晴らしいものですね。金属製エンドピンが普及したのはもっと後の20世紀中頃になってからのことです。私がチェロを始めた頃の楽器にもやはり太い木製のエンドピンが付いていました。
エンドピンの普及によってますますチェロを弾く右手は楽になり、高いポジションを弾く機会も格段に増したといえます。
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