◎7  楽器のお手入れ

ここで楽器のお手入れについてお話しします。
これは当たり前のことですが、弾いた後には汗、手垢、松脂などを柔らかい布で拭いておきましょう。単純なことですが、面倒臭くなってついおろそかになりやすいものです。
松脂は指板や駒の下、弦、テイルピースの下、そして弓には溜まりやすく、溜まって固くなった松脂は拭いても取れなくなるので注意が必要です。特にイタリアなどの新作はニスが柔らかく、松脂や汚れが付着するとニスと同化してしまうので、決して取れなくなります。
楽器店には弦楽器用の磨き液が売られていますが、私はそういったものの使用はあまりお勧めしません。
それらの液は大抵溶剤や研磨剤が含まれていて、場合によってニスを剥がしてしまう恐れがあるからです。
ドイツや中国の量産品の楽器はポリウレタンやアクリルなどの科学製品の塗料を吹き付けてあるので、そんな心配はありません。
どうしても落ちない汚れは信頼のおける楽器店に持っていってクリーニングしてもらいましょう。
次にどんな布で楽器を拭くか。私は着古した綿の下着のアンダーシャツ。これをよく洗い小さく切って使います。これが最高です。
よく楽器を買うとおまけについてくるクロスやそれ専用に売っている布、あれは繊維が短か過ぎ、繊維に汚れなどか付着すると布そのものが固くなってしまい、すぐに使い物にならなくなります。セーム皮も良くありません。繊維が短く楽器に密着し過ぎてニスを痛めます。新作など柔らかいニスの楽器をセーム皮で磨くと、一発でニスがダメになります。ちょうど砥石で楽器を研いでいるようなものです。密着する分、バロックバイオリンの肩当てに使う程度は良いかも知れませんが。
楽器を弾いた後には必ずケースにしまいましょう。よく出しっぱなしにしている人がいますが、室内の空気中には埃以外にも油分や脂が漂っているものです。出しっぱなしは演奏時と同じ位、楽器は汚れます。夏場はケースの蓋を微かに開けておくだけて十分です。
出来立ての新作楽器、特に夏の暑い時にはケースに楽器が密着して跡が着いてしまうので、この場合できるだけ埃の立たない乾燥した所にケースから出しておきます。
演奏家にとって楽器は体の一部です。いつも最高のコンディションと綺麗な顔で人前に立ちたいものですね。

つづく