◎其ノ三
弓を選ぶ

弦楽器は楽器だけ買えばそれでOKかというと、そう簡単には参りません。バイオリン族の弦楽器は弓がなければ演奏出来ないからです。ですから弓も買わなければなりません。そして弓も楽器と同じく、とても高価なものでもあります。

楽器の一部、楽器の部品である弓が何故そんなに高価なのか、そしてあんな棒きれひとつを買うために何故そんな血眼になって捜し求めなければならないのか、それが他の管楽器やギターなどを弾く人にとっては全く理解が出来ないことだそうです。しかし、それが弦楽器奏者にとっては宿命でもあります。こんな小さな棒きれひとつで劇的に音色や弾き心地が変わるのですから、弦楽器奏者が少しでも良い物を捜し求めるのは当然のことでしょう。

という訳で、次に弦楽器には欠かせない一部分、弓のことについて考えてみます。
今回はこれからチェロを始める、という方々に的を絞ってお話ししてみたいと思います。
まず楽器と弓とを同時に買うのは経済的にもかなりきついものがあります。同時に買うのにはどうしても予算が足りず、楽器と弓のランクを落とさなければならないようでしたら、楽器と弓とは分けて買ってもよいのではないかと思います。経済的に余裕ができれば全部を買い揃えれば良いわけです。
当教室でも楽器や弓を買う生徒のためには出来る限りの便宜は図らさせていただいております。もちろん楽器や弓の貸し出しはしておりますが、数に限りがある、というのが実状です。
大手の楽器店に併設するショールーム的な音楽教室のように、大量の楽器を常時貸し出すことができれば理想的なのでしょうが、当教室は音楽を極める道場でもありますのでそれは無理な話です。

それでは、実際どんな弓を購入すれば良いのか。よく楽器本体の三分の一の金額を出せば楽器と弓とが良いバランスになるとも言われますが、もちろんそんなことにこだわる必要はありません。とにかく大切なことは、悪い弓は、ボウイング(弓遣い)まで異常に困難なものにしてしまい、チェロを弾くという意欲すら無くしてしまうということすらあるということです。それくらい弓の役割は重要なものです。安い楽器なら楽器の半分、いや、もっと沢山の金額を出しても良いくらいです。

続く