◎其ノ二
チェロの値段 続き

では実際、チェロは最低いくら位で買えるのでしょうか。
最近、良質なチェロの値段は高騰しており、これからチェロを始めようとする人にとっては苦難の時代です。

まず、チェロの種類には大きく分けて二つあります。
一つ目は一人の製作家が一つひとつの楽器を材料から吟味し手作業で削りだして作り上げる楽器、いわゆるマスターピースです。出来上がるまでに相当の手間と時間がかかるので、値段もかなりの高額になるでしょう。
製作者にもよりますが、古くなれば価値は上がります。

二つ目は量産品のチェロ。大まかな削りの作業をコンピュータ制御の機械でやってしまいます。仕上げに人の手を加えます。したがって品質にばらつきがなく、比較的安価なのが特長です。材料の差や手の加え方の程度でランクが変わります。これは定価物とも呼ばれ定価が付けられているので、どこで買っても同じ値段です。
ドイツや中国などから大量に輸入され出回っております。フランスや旧東欧圏の物もあります。
ルーマニアや中国製なら大体30万円位から買えるでしょう。
ドイツ製なら40万円位から手に入ります。このような楽器は古くなっても中古になるだけで価値は上がりません。このような中古のチェロがピアノの中古品のように沢山市場に大量に出回れば、これからチェロを始めるという人にとっては救いとなるでしょうが、残念ながらたまにしかお目にかかれないのが現状です。

最初申し上げたマスターピースは、日本人の作品でもチェロでは最低150万円はするでしょう。中には200万円を超す作品もあります。イタリアの新作なら、駆け出しの無名作家の作品でも最低200万はします。
モダンやオールドになるとそれこそ目が飛び出るような額。値段が一桁も二桁も違ってきます。
モダンとは19世紀中頃から20世紀中頃までに作られた物を指し、オールドはそれ以前に製作された物を指します。

一般的に、初心者が買う機会が多い量産品のチェロについてもう少しお話し致しましょう。
先程は定価が付けられている物なのでどの楽器店で買っても同じ値段だと申し上げました。楽器店によっては多少の値引率の違いはあっても値段は大体同じようなものでしょう。しかしそれらのチェロは駒や弦などの部品が装着されていない状態で輸入されます。それを各楽器店の職人がセットアップして売りに出すのです。従って職人の技量によっては性能や鳴り方にかなりの差が出るのは事実です。
もしいい加減な店で買った場合どうなるのでしょうか。もし買った楽器が悪い調整で弾き難い場合、その楽器をいざ他の職人の所へ持っていってもなかなか調整や修理はしてもらえないものです。
そこで最初から確かな技術を持った職人がいる店で買う事がいかに重要なのかわかって頂けるでしょう。
素人には職人の良し悪しなどわかりません。買う前にチェロの先生など経験豊富な方と十分相談する必要があります。