◎其ノ四
実際のレッスンでは、教師は自分の感情や趣味を生徒には押し付けない方がいいと思います。
ましてや重箱の底をつつくようなしつこいレッスンは絶対避けるべきです。先生は自分が言ったことがその場で実現されれば自己満足は得られるでしょうが(実現されない場合、大変なストレスとなり、なかにはヒステリーを起こす先生もいるかも知れません)、生徒はやってきたことが否定されたような気分に陥ります。このようなレッスンでの成果は大抵その場限りです。次の曲にはつながりません。生徒には自分で考える余地を残してあげなければなりません。全ての曲を先生から習うことはできないからです。
行き先がずれているようなら、軌道を修正してあげれば良いのです。目的地には一人で行けるために地図で教えることであって、手を引いて連れていってあげるのではないのです。弾き方ではなく、考え方を教える、ということでもあります。
それでは何のためにレッスンをするのか、レッスンにならないじゃかいか!と言う方はおられるでしょう。
しかしそれはレッスンをすることの意味を間違って理解しているだけなのです。
私にいわせれば、レッスンとはあくまでもその生徒に作品を演奏する能力を養わせることであり、独り立ちして自分で好きな曲がいつでも演奏できること、つまり生徒の自発性を促すことにあると思うのです。
教え過ぎはよくありません。結局生徒の独立心を奪ってしまい、ヘタをすると習っていない曲は弾けないという信じられないことになってしまいますよ。先程も言いましたように、手を引いてあげなければ、一人では怖くてどこにも行けない、ということになるのです。
教えるほうも大変です。あらゆるタイプの作品のデータを頭に蓄積していなければならないし、教えることが、なぜそうなるのか常に理屈で説明できなければならないからです。決して気まぐれでは教えられないはずです。
終わり
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