よく他で習った経験の後、初めて私のレッスンを受けに来る方の中には、ボウイングが全くできていない方が時々おられます。
彼らのボウイングを見ると大抵は弓が真っ直ぐ動いていないことがほとんどです。その結果として、弓が弦に当たる位置も上に行ったり下がったり。音色もひどいものです。
どんなボウイングか具体的に言うと、弓の軌跡が三日月状の軌跡を描きながら動く、肘の動きも弓と同じく三日月状。図2に示したような感じです。青い線は弓の軌跡、緑の線は肘の動きを描いた軌跡です。図でお分かりのように、これでは弓の毛と弦との接地面が不安定となり弦は正常に振動しません。
では、なぜこのようなボウイングになるのでしょうか。
理由はただひとつ。肘から先が使えていないということです。もうひとつ加えるなら肩で弾いているということ。
ボウイングのしなやかさを得るためにはちょっとした意識の持ち方が大切です。
簡単な練習をやってみましょう。
ボウイングの練習はまず解放弦で始めます。図1で示したように、まず弓の根元からダウンボウで弾き始めます。この時、肘を使って弓を引っ張り出すような感じで弾き始めます。肘で弾くことが限界になれば次に弓先に向けて前腕を押し出します。その限界とは、これより先へこのまま行けば肘が後ろに下がり弓先が下を向いてしまうという所です。
次にアップボウを弾きます。
アップではダウンの時押し出した肘から先(前腕)をまず引き戻し、弓が中央まで戻ると次は肘を使って押し込みます。
しなやかで真っ直ぐなボウイングはこの運動の滑らかな繰り返しです。
この時、気をつけるべき点は、肘から先、特に手首は弓の根元では力を抜き、先に行くにしたがい弓はしっかり保持されます。
言い方を変えれば、弓の元に来るにしたがって、肘から先は力が抜けていき最も根元では手は指先まで完全に脱力されていなければならない、ということです。
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