◎ 何をそんなに怒っているの?

そう言いたくなるような演奏が多過ぎると思いませんか?
怒りで目は血走り、眉間には深い皺が!
美女も台なしです。

指揮者など闘争心をむきだしにして今にも飛び掛からんばかり。
見ていて恐ろしくなりますね! それを通り越して滑稽にすら見えてきます。彼らの表情を見ていますと、泣いたり怒ったり“顔芸”の競い合いとしか思えません。見ていて気味が悪い。
顔の表情だけで芸術を創造できるとでも思っているのでしょうか?指揮法の教程には顔芸の項目などないはず。
指揮棒のテクニックだけでオーケストラを引っ張っていくのが筋だと思うのですがねえ。
楽器の場合でも演奏は常に居丈高。常に何かに怒りをぶつけているようです。バイオリンのソロなど近寄れば切り殺されそうな気迫に圧倒されます。
弓で心臓をひと突きにされそう!

が、しかしどんな楽譜を見てもそんなに怒って弾くような要素は私には見えてはこないのですが…。

演奏はたとえ心の中では怒り葛藤が渦巻いていようとも、表面はあくまでも淡々とあるべきです。これみよがしな激しい動きも一切無用。
怒りなどの表情を感じ取るのは演奏を聴く聴衆の側だからです。

芝居でも演者が感情を剥き出しで演ずると、かえって白けて引いてしまうでしょう?あれと同じです。

演奏者はあくまでも黒子であり文楽の人形使いのような存在であるべきだと思います。
だって人形使いが泣いたり怒ったりしたら変じゃないですか。

“主役はあくまでも作品なのだから。”

つねに淡々と!
演奏家としてそうありたいものです。

終