◎ 歌う左手のために 1

お元気ですか!
この暑い季節、チェロを練習するのは気力も続かず苦労しますね。特にチェロの持ち運びはきついものです。しかし、これも試練だと思って頑張りましょう!

今日はチェロの歌わせるテクニックについて、私が日々考えていることをお話しいたします。

世の中にはチェロを何年も弾いているのにもかかわらず、なかなか思うように弾けない、なぜかぎこちなく、伸びのびとした音で弾けないと悩んでいる方は多いと思います。
自分の音は、BGMやCDなどでよく聞くチェロの音のような美しく伸びのある音とは程遠く、暗くて固く響きがない。そんな自分の音に自信が持てない、はたまた将来の希望も見出だせなく行き詰まっている、という方もいらっしゃるかもしれません。
そんな時、少しの考え方の転換で道が開けることもあります。
意外と簡単なことが原因となっていることも多いものです。

音色が固くて伸びがなく響かない、こんな時の原因は左手が歌えていない、ということが結構多いものです。
音が悪いのはボウイングに欠陥があるんじゃないの?何で左手なの?と不思議に思う方も多いかと思います。

左指はただ弦長を決める(または音程を取る)役割しか持たないと思っている方はいらっしゃるでしょう。
もちろん、ボウイングは大切です。しかし現実としてボウイングだけでなく左手も音色のためにはとても重要な働きをしているのです。あくまで左手と右手のバランスが取られているべきなのです。

話を進める前にバイオリンやチェロはなぜあれほど多様な響きを持ち、人の声に近い複雑な響きを持つのか考えてみましょう。

バイオリンやチェロを見てまず気がつくことはバイオリン族の楽器にはギターやヴィオラ・ダ・ガムバのようなフレット(音程を取るためネックに埋め込まれた金属片。ガムバはネックにガット弦を巻き付けます)が無いことがあげられます。
実はこれが最大の理由なのです。
つまりフレットを経ることなく直接弦を押さえることによって同時に沢山の音を取ることが出来るのです。正しい音程を中心に高い音と低い音が同時に押さえられ、またヴィブラートを加えることによって人の声に匹敵する複雑な響きになるのです。ですから、指で押さえない解放弦との表情の差は歴然としています。

続く