まず一言でいえば、少し楽器のテンションを下げることによって楽器の音は変化します。響きが豊かになり、まろやかになるのです。特にビオラやチェロ、コントラバスには効果てきめん。バイオリンもキンキンした音が抜けて、耳にも優しくなります。とにかく楽器の音色の変化が楽しめるということです。
左指も押さえ安くなりますし、ボーイングも楽になります。実際430や435といったピッチは19世紀から20世紀初頭のヨーロッパで実際に使われていたもので、その頃の作品を演奏するにはまさにうってつけといえます。440から比べてもそんなに極端に低くは感じないので、比較的簡単に馴染めますよ。バロックから古典派にかけての415となると、現代のピッチより半音低いので、ピアノに馴染んでいる人や小さい頃からバイオリンをやっている人にとっては自分が今何の音を弾いているのか判らなくなり、少々きついと感じる方がおられるかも知れません。ピッチに関して、バロックの時代には現代のピッチよりもさらに全音以上低いまたは半音高いという事もありました。とにかくヨーロッパ中ピッチは殆ど統一されるということがなかったようです。極端に言えば、国が変わればピッチも変わる、といった具合です。
因みにヘンデル所有の音叉は422.5だったそうです。