其ノ七
美食家の聖地

やがて結婚した私達は、広島から福岡に移り住むことになりました。これは以前にもお話ししましたように、九州交響楽団に入団するためです。
妻と知り合うようになってから、少しずついろいろな物を食べられるようになった私は博多に住むことになり、今度は一転、美食の道を歩む事になりました。
ご存知のように九州は美味い物大陸であり、福岡はまさに美味い物天国、酒飲み天国です。
私達は広島で結婚式を挙げその足で直接九州に乗り込みました。
式後博多駅に降り立った私達は早速、天神にある魚を食べさせる店に直行したのでした。これは九響の事務局長が気をきかせてくれた粋な計らいで、席を設けてくれていたのです。
その海産物の新鮮さと玄海に揉まれた荒々しくも繊細な味にはただただ感動のみ。それまで広島で味わってきた、穏やかな瀬戸内海のものとはまた違うのですね。
さて私達が新居を構えたのは福岡市中央区今川二丁目にある2DKのマンション。
このマンションは当時有名なマンションで戦後福岡市に最初にできたマンションの一つで、できた当時は西鉄ライオンズの独身寮だったと聞いています。タクシーに乗っても今川マンションといえば連れていってくれました。古い建物なので壁がとても厚く防音効果がとても高かったです。そのため当時九響のメンバーが7名ほど住んでおりました。
マンションの西側には樋井川という細い川が流れており、それを渡ればそこは早良区西新です。西新の商店街は以前ブログでも紹介したことがありますが。リヤカー部隊で有名です。近郊の漁師や農家の奥さんたちが採れたものをリヤカーに積んで売りに来るのです。何でも新鮮で安い。料理の得意な妻は食材を求めて毎日喜んで買物に出かけていました。

つづく