其ノ一
◎初心者の場合
今回は演奏の要、チューニングについてお話しします。
昨年にもチューニングのお話はさせていただきましたが、大切なことなので再びお付き合いください。
チェロを習う者にとってチューニングを正しく行うことはまず第一の関門です。
まずチューニングが楽に出来るためには楽器は常に調整されていることが大切です。そんなに安くない楽器でも、初めから糸巻きの止まりがひどく悪い物が売られていることがよくあります。以前にもある一人の生徒が持っていた楽器は糸巻きが止まらず、演奏中もどんどんピッチが下がるという酷い代物でした。確か中国製だったと思います。こうなればもう、レッスンどころではなくなりますし、なにより家での日々の練習もいい加減になってしまいます。
特に子供用の分数楽器では問題は深刻です。
ここで私が楽器店に切に言いたいのは、売る側にとっては、たかが20万か30万の安い楽器や子供用楽器だとしても、それを買う人にとっては、一世一代の買い物かも知れません。また買う人にとっては宝物でもあるのです。子供にとっては将来を決める大切な楽器なのです。高い楽器と同じ気持ちで調整してもらいたいです。
しいては、良くも悪くもそれが店の評判にもなりますし、良い場合、結果として将来もっとグレードの高い楽器の買い替えにもつながるのです。そこがわかっていない楽器店が多すぎます。初心者にとって、チューニングのしやすさはデリケートな問題、売る方はもっと神経を使ってほしいものです。
実際のチューニングを見てみますと、初心者の場合、まず正確なピッチの音が鳴る物を用意します。ピアノやオルガンがあれば十分ですが、それらが手元にない場合はやはりチューナーに頼るしかありません。最近のチューナーはどれも高性能ですが、視覚ばかりに頼り過ぎると(チューナーはいつも正確だとは限りません)、肝心な耳で合わせるという習慣が身につきにくいので、あくまで補助的な目的で使うべきです。
しかしもしも購入されるのでしたら、性能が良く安価なKORG社の“OTー120”がオススメです。
初心者にとって、最初はペグ(糸巻き)でのチューニング(特にスチール弦の場合)はとても難しいものです。でも、挑戦しましょう。大まかに合わせて後はアジャスターで正確に合わせばいいのです。
またアジャスターだけに頼っていると、駒を曲げてしまう原因にもなります。一旦曲げてしまうとなかなか元には戻りません。
チューナーでのチューニングにも慣れてくると、ピアノや音叉からA(ラ)の音をとる練習をします。
まずA(ラ)を音叉で合わせば、次にA線の二分の一の所を触れ、倍音を出します(フラジョレット)。次にD線の三分の一の所を触れAのフラジョレット音をだします。この時、A線のAとD線でだすAが同じ高さになるように合わせます。同じようにD線のフラジョレットDとG線のフラジョレットDというように、他の弦でも同じ手順で合わせます。
チェロのような長い弦の楽器で出やすいフラジョレットの特性を利用した合わせ方です。もっとチューニングに習熟すれば、二弦ずつ重音を弾きながらペグを回しながら合わてください。これが最も正確に合わすことができる方法です。この場合、ペグの止まり良さとペグの角度が回しやすく合わされていなければなりません。
つづく
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