◎其ノ一
松脂の話
日本では5月から9月頃にかけては湿度も高くなり、楽器にとっても不快な気候となります。楽器に埃や松脂の粉、手垢などが溜まると、それに湿気が吸い込み、響きを悪くしたり接合部分にトラブル(特に傷の多い楽器の場合)を起こしたりすことがあります。
楽器は渇いた布でこまめに拭く習慣を持ちましょう。
したがってこの季節、なるべくサラッとした松脂を使うことをお勧めします。
松脂はバイオリンとチェロでは違うのか、ということをよく聞かれますが、コントラバス以外はみな同じです。(コントラバス奏者のなかには強い引っ掛かりを避けるため、あえてバイオリンやチェロ用の松脂を使う人もいますが。)
銘柄で性質が異なるので各自好みや目的に合わせて選びます。
柔らかい松脂は粉になると湿気を吸い込み、ベタベタになって楽器にへばり付きます。
そこで私はギュスターブ・ベルナーデルの松脂を愛用しています。音もとてもしなやかで気に入ってます。以前売られていた同名の松脂は、30年以上前に製造中止となり、今現在売られているものは復刻版です。そして性質も全く異なります(楽器店は同じだといいますが…)。
昔の物の方が遥かに良かったというか物が違います。私は昔買っておいた物を今も大切に使っております。
これを使うと、弓のランクが確実に一つ上がりますし、何となく上手になったような気がしますから不思議です。
この松脂に代わる物としては、現在のベルナーデルかメロスのバロックチェロ用またはアルシェの緑の箱に入った物くらいでしょうか。乾季にはギォームなんかもいいですね。
◎松脂の保存
松脂は冷蔵庫で保存すると長年に渡って良い状態で使えます。(楽器ケースに入れて持ち歩くときは仕方がありませんが、夏場にケースに入れっぱなしにしておくのはよくありません。)
同じくガット弦も冷蔵庫で一定の温度と湿度で保存すれば劣化を遅くさせることができます。
◎割れた松脂
松脂を落として割ってしまうということってよくありますよね!
そんな時、あなたならどうしますか?
諦めてそのまま使う、または粉々なら捨ててしまう?
でもちょっと待って下さい!
方法はあります。
では松脂を落として割った時、どうすればよいのか?
まず大きく二つか三つに割れた時、これは簡単です。割れた部分にアルコールを垂らして張り合わせます、念のため二三日そっとしておけば元通りです。
次に粉々に割れた時、この場合はまず湯煎にして溶かします。(松脂の性質は変化します。)
タマゴのパックなど薄くてチャリチャリしたものに割れた松脂を入れて湯煎にし、溶かします。湯から下ろし固まれば容器から松脂を剥がします。容器が薄すぎると容器が溶けてしまいます。容器が堅すぎると剥がしにくいので気をつけましょう。
尚、松脂はとてもよく燃えますので、火の取り扱いにはくれぐれもご注意ください。間違っても直接鍋などで火にはかけないように!
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