◎2 効能及び選曲
アマチュアオーケストラにはどんなものがあるかを見てきましたが、次にオーケストラをいかに自分の音楽生活、もしくは精神生活に役立てていくかを考えてみましょう。
前にも申し上げましたが、オーケストラで演奏するということは、最も効率よくテクニックや音楽性を身につけるための早道なのです。
最大の利点は、オーケストラで演奏するということは、皆と時間を共有することによって連帯感が生まれるということでしょう。
芸術作品を媒介として皆の気持ち(聴衆も含めて)がひとつになる、なんて素晴らしいことでしょう!
また、他人と比較し照らし合わせることによって、自分の技術的レベルも分かるでしょう。テンポ感も養われます。また、正しく演奏された場合、音程感覚も向上するはずです。
これらの良い習慣が適正に演奏されれば楽団員全員の同じ時間的流れに沿って自然に自分に取り込まれるのです。引きずり込まれると言ってもいいでしょう。
ではどんな作品を選べばよいのか。
まず言えるのはオーケストラの基本とは“交響曲の父ハイドン”の作品を演奏することです。
バロック、古典の作曲家のほとんど、特にJ・ハイドンの作品は極一般的には王侯貴族を喜ばせるために書かれた、ということになっていますが、本当に彼が考えていたのは、音楽とはまず演奏者自身の音楽的興味を奮い立たせるものでなければならない、そして演奏が楽しくなければならない、ということなのです。
勿論、彼の作品にも演奏が難しい物もありますが、たいていは常識的なテクニックの範囲内で弾ける曲ばかりです。
彼の作品を弾くことで、知らず知らずに演奏技術や合奏技術が向上できるように、綿密な計画の元に書かれているのです。
彼には宮廷楽長として雇い主を喜ばせ、楽団員の技術向上を図る義務があったのです。ですから退屈であったり、作曲家本意の難しすぎる曲では楽団員のやる気も持続しません。また雇い主が退屈するようでは即解雇です。ですから、彼自身長年に渡って知らず知らずのうちに弾く人をうまく“乗せて”上達させ、聴衆に満足感を与える術を身につけていったのです。そのことに関してハイドンは超名人だったのです。
その意味で現代の演奏者も絶対にハイドンをやるべきであり恩恵を受けるべきなのです。
しかし、そうは言いましてもハイドンの効果を実感し身につけるのには、合奏の極意を身につけ、なおかつハイドンの心を理解する最良の指導者が必要不可欠なことは言うまでもありません。
昨今、アマチュアやプロのシンフォニーオーケストラを含めて(音楽家としての基礎を築くための大切な時期であるべき音大のオーケストラですら)ハイドンの作品を演奏する機会が減少しているのは現実です。嘆かわしいことです。
その理由として考えられるのは、アマチュアオーケストラでは大抵が3管、4管編成などの大所帯のため、管楽器の出番を増やすため、弦楽器主体のハイドンのような小編成の交響曲は敬遠されがちなのです。しかし、いくら編成は大きくなっても、オーケストラは弦楽器が主体なので、弦主体のハイドンを避ける理屈にはなりません。ハイドンはオーケストラの基本!試金石なのです。
そこで、アマチュアオーケストラを運営している方に提案します。
弦が上手くなればオーケストラのレベルも格段に向上するものなのです。
大編成プログラムの狭間に、毎回ハイドンの交響曲一曲入れるというのはどうでしょうか?一曲30分程度しかかかりません。
それでオーケストラは確実に成長します。
何がなんでも大編成の曲をというのは考えが単純過ぎますよ。
続く
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