初心者の方でチェロにもある程度慣れ、第四ポジションくらいまで使えるようになれば、それまで弾けていたファーストポジションに戻ると音程がなぜか悪くなっている、上手く音が取れないなどということなどありませんか?
人間の手はどうしても閉じよう閉じようとします。
つまり、指と指との間隔が広いファーストポジションでは、指が閉じることによって人差し指の音は高く、小指の音は低く、などということになってしまうからです。
特に手の小さい人にとってはファーストポジションをしっかりと弾くということは大変かつ重要な課題です。
また手の大きな人にとっても手が大きい故に、ファーストのポジションの重要性を軽視してしまうということにもなる危険性があります。
改善するためにはまずファーストポジションで、各指を弦上にできるだけ残しながら弾くという習慣をしっかり身につけなければなりません。
では、なぜ指を残さなければならないのか?
仮に、今弾いた指を次の指に移行する時、特に移弦の時などその都度上げてしまえば、その前の音の残響はすぐに消えてしまうはずです。チェロを残響を残しながら豊かに響かせるためには可能な限り指を残しながら弾くということが絶対に必用となります。チェロは単なるメロディーの楽器というだけでなくギターのように和声の楽器でもあるのです(むしろ、その要素の方が強い)。指を残すことによって和声の把握にもつながるのです。
音程も安定感を増すでしょう。
各指がバラバラの上げ下げでは音程も安定できません。
私のレッスンでは、チェロにも慣れ、色々なポジションを駆使し、レパートリーも増えてきた生徒に対して敢えてファーストポジションに戻る課題を与えています。さらなる飛翔に備えて一旦引き下がるのです。
指を残すという動作がないとチェロの豊かな残響と安定した音程を得ることができないというのは先ほども申し上げた通りです。
そんな時、とても役にたつのがセバスチャン リーの「40の簡単なエチュード 作品70」です。
このエチュードの良い所は、
一曲一曲がとても短いこと、そしてアレグロとかアダージョなどの感情速度表示記号が全くないということで、演奏者の程度に合わせ速さを自由に変えることができます。
そして、なんと言っても一番良いのは全曲デュエットになっていることです。
これによって生徒は自分の音程の悪さを知ることができるし、楽器の響かせ方を学ぶことができるのです。
特に初心者の方ならドッツアウアーのメトード第一巻の後半くらいになれば使用できます。
かなり弾ける生徒でもこのエチュードを練習することによって基礎を見直し、より高度な曲に移行する足掛かりとなることでしょう。
親指のポジションでも基本的な左手のシステムはファーストポジションの指の上げ下ろしとは何ら変わりはないのです。
とにかくこのエチュードで徹底的に指を残す練習をしてみてください。
半年もすれば明確な上達が見られるでしょう。
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