◎ 3 テンポと音色

音色はテンポの変化によって確実に変化します。
これは音楽の基本の部分であるアーティキュレーション(ひとつの音形を小さな単位に区切り意味を与えること)、つまり音楽を表現する上で欠くことの出来ない問題のひとつです。
例えば8分音符が四つ並んでいたとします。♪♪♪♪のように。その時の4分音符のテンポをメトロノームで120で弾きます。何も指示がない場合音色はタッタッタッタッタッと歯切れよい音色なるのが普通です。反対に同じ音符を40で弾いたとします。その時、音の長さはどうなるでしょうか。ターターターターと間延びした雰囲気になってきますね。
これを見てもわかるように、音符固有の音色など無いことがわかるはずです。
また長い音符と短い音符が交互に出て来るとします。この時、両方の音符の音色を同等の音色で弾けばどうなるでしょうか?答は明白ですね。
もっと解りやすく説明すると、例えばレモンの汁をそのまま飲んだとします。その時の味は?  凄く酸っぱいでしょう!飲めたものではありません  それを水半分で割ればどうですか?  ずいぶんまろやかになり飲みやすくなるはずです。砂糖など加えれば立派なジュースです。同じレモンでも水の量で味わいは劇的に変化するのです。ウイスキーの水割りなど問題はもっと深刻ですよね!

もうひとつ音楽で考えれば、例えば長い音符も短い音符も関係なく常に全弓で弾いているようなものです。音色も悪く乱暴で、常に全力疾走しているようなもの。肉体的にも大変窮屈です(こんな人、結構よく見かけますが)

このテンポと音色の問題はスラーの場合も同じです。
テンポが早くなるにつれてスラーの終わりの部分の響きは短くなるのが自然です。
テンポが遅くなるにしたがってスラーの響きは長く引き伸ばされるのが心情的にもしっくりときます。

このように、今弾いている音符はテンポと非常に強い結び付きがあるということがわかると思います。一曲の中のすべての音符の個性が最大限活かされるテンポ設定は音楽を表現する上でとても重要な課題でもあるのです。

終わり