実践編 4
真っ白な頭

次にあがってしまって頭の中が真っ白になってしまい、今何を弾いているのかわからなくなってしまった時にどうするべきか、自分を冷静に観察すること以外にも何かできる方法はないものでしょうか?
ある有名なチェロの先生はあがってしまえば、曲中の休止符や楽章の間など隙を見つけては自分の膝を思いっきりつねると我にかえると言っておられましたが、“あぁ痛そう!。”でもそれはどうですかねえ。どこか原始的というか少なくとも芸術的ではないですよね! またある先生は、あがると身体がガチガチに強張るのでチェロを弾くとき常に身体を意識的に動かしていれば自然に強張りが解れ、あがりも楽になると言っておられました。それもある面で効果があるとは思いますが、よほど上手くやらないと演奏する姿がとても醜くなってしまいます。余分な動作は芸術には関係なくただ見苦しいだけなのですから。
だいたいあがる時というのは、音が静かで緊張感あふれる部分であがることが多くなるものです。
そんな静かな時に緊張緩和目的で身体を動かすのはかなり難しいものだと思います。やはり見苦しい。音が大きく音楽がうねるような部分ではそんな極端にあがったりしないものではないでしょうか。そんな時、ことさらに身体を動かす必要もないのではないでしょうか。
あがって頭が真っ白になっている人に対していくら“大丈夫、落ち着いて!”などと励ますのは《まったく無駄なことです。》人は無意識的に他人の言葉に反発するものだからです。結果その言葉が不安感を蘇らせ、かえって酷くなることさえあります。勉強しない子に勉強しろとガミガミ言うようなものです。あくまでも自分で気がつき対処しなければ解決できない問題であることには変わりありません。