皆さん、演奏会や発表会などで緊張のあまり弓の震が止まらずどうしようもなかった、などという経験はございませんか? あがったことがない人には理解できないでしょうが、これはあがり症の者にとっては本当に苦しいもので、時には自己嫌悪に陥ったりすることもあります。
 
発売会などであがったり緊張のあまり弓が飛んでしまう方を見るにつけ、なにが原因か、そしてなにがそのような症状をもたらすのか、なんとか改善する方法はないものかと私自身があがり症のため、自身日々模索しております。
 
震えを止めるには、まず簡単に言ってしまえば、どんな緊張する場面でも平常心を保つ訓練が必要だということ。
 
しかし、それは無理な注文です。悔しいかな震えるものはどうしようもないのです。そんな簡単には問題は解決しません。意識すればますます心拍数があがり震えてしまうものなのです。
 
しかし、なんとか対処法を考えなければなりません。
 
まず、震えの原因として考えられることとして言えることの多くは、単に緊張からくる筋肉の痙攣です。
 
もうひとつ、これは基本的な問題なのですが、緊張する以前に弓が普段からしっかり保持できていない、ということも原因のひとつだと考えられます。
保持できていないことによる不安定さからくる不安がさらに震えに拍車をかけるのです。この場合はもう一度弓の持ち方を一から見直すべきです。
 
弓の持ち方として、ここで言う「しっかり」とはよく誤解されやすい言葉なのですが、あくまで適切に、ということであって、決して強い力で握りしめろということではありません。
 
震えの状況を観察してみると
、まず、体が緊張により呼吸が浅く胸呼吸となり、肩で息を吸っていることに気がつくでしょう。つまり肩が上がってしまっているのです。。肩が上がれば当然肘も上がります。その結果、弓を平常な力のバランスでは支えられなくなりどうしても握ってしまうのです。人はここぞという緊張の場面、例えば物を壊した潰したりするときは無意識に肩を上げているものです。また平常心を失い、怒り狂っているときも緊張のあまり肩は上がっているものです。
 
また緊張時に弓を握りしめる、という悪癖は緊張していなくとも普段からも強い力で握りしめている場合が多く、日常的に弓は必要最小限の力で持つことをこころがけ、弓の持ち方そのものを常に研究しておくべきです。
 
次に、強い力で弓を握りしめることでどんなことが起こるでしょうか。そして緊張時、握りしめる力を少しでも抜いてやるにはどのような方法があるのでしょうか。
 
緊張時に弓を強い握力で握りしめてしまう。これでは腕から肘、手首にかけてますます力が入ってしまい、ますます痙攣が痙攣を呼んでしまいます。
肩や肘が上がってしまっているため、人差し指で弓を弦に押さえつけ易くなります。そんな時は大抵肘が上がり、上腕の裏側(なんという筋肉かは存じ上げません)が痙攣しやすくなっているものです。そんな時は意識的にいつも構えている人差し指の位置(普通、弓を持つ人差し指の位置は、関節の端の方に位置し、手首を左に回転させるような動きを伴います。)から、弓を支える力の方向をほんの少し指の中央部分に移すだけで、肘が下がり震えが止まることもあります。下がった肩や肘の状態では物理的に弓は強くは握れないのです。図1と2を参考にしてください。
この写真はあくまでかける力の方向の移行を示すもので、構える指の位置を移動させるという意味ではありません。
 
 
以上のように、弓を適切な力加減で保持することはとても難しいことであり大切なことでもあります。
 
さらに、あがってしまって弓の震えが止まらず、どうしようもない緊急時の対策としては、意識して弓の真ん中から先を積極的に使うこと。
弓の真ん中から先は最も弓が安定するのです。握って弓の根元で弾くのはとても困難ですが、弓先では握ってでも、肩や肘が上がってしまっても何とか演奏できるからです。フォルテなどでどうしても根元を使わなくてはならない時はできるだけ弓を使う
幅を大きく取り、根元に滞在する時間をなるべく少なくなるよう務めます。
 
結局、緊張時の震えはほぼ弓の不安定さからくる不安感によって起こることなのです。
 
しかし、こんなことはありませんか?
 
特に冬のこの時期、乾燥などで手のひらや指がカサカサで、本のページが全然めくれない、または時々手から物をすべり落とす、(ひどい場合は脳神経科を受診してください)
、等々
そんな時は、大抵弓の保持も不安定になっているものです。特に、薬指と小指が弓の背中を滑ってしまえば、まともな弓のコントロールは不可能です。こんなとき、「あがり」や緊張を伴うと必ずといってよいほど弓は震えてしまいます。普段、弓をしっかり保持できているのに、これでは残念です。
やはりこの場合でも震えは弓の不安定さからくるのです。
不安定感が不安感を煽るとも言えるかも知れません。
 
しかし、こんな場合、次のような対処法が、あります。続く
 
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