◎ 1 オーケストラプレイヤーという人種及びその生態
このクソ熱い季節、大編成のオケなんか暑苦しくて聴きたくありませんね!
やはりソロか室内楽が最高です。
しかし巷ではプロのフルオーケストラがサマーコンサートなどと称して趣向を凝らせ、コンサート会場を賑わせております。
さて、そんなプロオーケストラで演奏しているプレイヤーって一体どんな人達なのでしょうか?
一見派手できらびやか、毎日名曲に触れ充実感に満ち溢れ人生を謳歌しているように見えます。でも一体あの人達はどんな生活をしているのだろうか。誰もが憧れをもって思うことだと思います。
しかし、一歩裏に回ってみると、想像と現実とはかなり異なるようです。
もちろんなかには満足して演奏されている方もいらっしゃいます。でもそのような方はほんの一握りに過ぎず、大抵は生活に追われ、まともに音楽など考える余裕すらない、次から次へと与えられる曲を何も考えず流れ作業のように淡々と消化する日々、というのがほとんどなのです。
一般的に日本のオーケストラの給料はヨーロッパのそれとは異なりとても安く(特にドイツ、スイス、オーストリアが芸術にかける国会予算には凄まじいものがあります)、比較的待遇が良いと言われるオケでも、全国一般の企業の平均から見れば極普通かそれ以下でしかないのです。
従って、楽員を養うには沢山の仕事をこなさなければなりません。
そのような状態で演奏に臨むわけですから、質の高い演奏になるわけがなく紋切り型にならざるを得ない。どうしても雑にならざるを得ないのです。多少の上手い下手はあるものの、どの演奏も大差が無い、そんなに次元の差はないということがほとんどです。
楽員達も元は大きな夢を持って入団するのですが、オーケストラの現状を目の前するにつれて段々と精神も麻痺してくるのです。これはオーケストラで生きていく以上逃れようがなく、どうしようもない問題なのです。
マニュアルに沿って演奏する習慣を叩き込まれます。(俗にオケびきと呼ばれます)
基本は数をこなすこと。
長年勤めた楽員から見た良い指揮者の条件とは何か知ってますか?
まず練習を早く終ってくれる指揮者。リハーサル時間が短いことを指します。
次に、あまり根掘り葉掘り色々な要求をしない指揮者。大体オケは団によって異なる段取りて動いていますので、そのリズムを壊されるのを楽員達は嫌います。昔はリハーサルの時に弦楽器のプレイヤーを一人ずつ弾かせる指揮者は沢山いましたが、今そんなことをすれば二度と呼ばれなくなるのは必定です。
音楽家ユニオン(組合)の力が強いですから。
それともうひとつ、楽員の名前を覚えてくる指揮者。
“誰々さん”と名指しで要求されると嬉しいものです。プライドだけは一人前です。
とにかく数をこなさなければならないので一回々細かいことは言ってられないのです。
よく、オーケストラを長年勤めるコツとして、まず馬鹿になることだと言われるのですが、考えてみれば情けない話ですね!
名曲を前にして馬鹿になれというのですから。
真面目にやっていれば損をするというのですから。
続く
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