◎第三話
ポルタメント

これも普段私達は何気なく使っている奏法ですが、いろいろな問題を含んでいます。
今日はポルタメントのお話です。

まず、この言葉の意味ですが、二つの音を滑らかに繋ぐという奏法のことを指します。ここで注意しないといけないのは、音と音との間を“ずらして”滑らせる、いわゆるグリッサンドとははっきり区別しないといけないということです。
ポルタメントはあくまでも音を滑らかに繋げるということが第一の目的なので、音を滑らせるということは二義的に考えた方が音楽的にも芸術的にうまくいくと思います。
ですから、弦楽器での演奏で移弦がある場合、滑らかに弦を移る場合にもポルタメントは役に立ちます。実際にポジション移動と二弦をまたぐ移弦を伴ったポルタメントの奏法も存在します。

ポルタメントをかけることについて大切な事は常に明確な意図の下に計画的にかけられることが大前提です。
けっして雰囲気(無い音楽性や無い歌ごころを補おうとして)や指の都合でかかってしまってはなりません。

では次にポルタメントの方法です。

まず二通りの方法が考えられます。
ある音からある音に移る時、まず初めの音を軽くずらして開始する方法、そして二つ目の音に到着する寸前に音をずらせて減速する方法です。そしてこれらの混合形も考えられるでしょう。
どの場合にも大切なことは弦楽器の場合、弓が移動する間は必ず弓が弦に掛かる圧力を抜いてやること、そして弓のスピードも一瞬落とします。これは原則です。これが守られない場合、下品で悪趣味なグリッサンドになってしまうでしょう。
この方法を実際の演奏に取り入れると、移弦や移弦及び遠くに隔たった音に移動するとき最大の効果を期待することができるでしょう。
もうひとつ絶対忘れてはならない大切なことは、ポルタメントで音が移動した直後、再びポルタメントはかけてはならないということ。ひとつのフレーズに何度もかけてはならないということです。(作曲者が指示した場合は除きます。例えばハイドンの作品33の第2番のカルテットのように)
ポルタメントは常に自分の音楽的センス内で控え目に使用するべきです。
これらが守られて適正に使用されれば、もし楽譜にグリッサンドの表示があった場合も音楽が下品さや悪趣味に陥ることが最大限避けられることでしょう。

終わりuntitled