其ノ七
解放弦の練習
解放弦を弾く時、“其ノ六”で練習したような腕の動作で弾いてみます。
まず弓の中程で肩から先、腕全体を使って、ゆったりしたテンポで、四分音符を連続して弾きます。
ボゥイングを教える時、最初は全弓を使ってロングトーンの練習をさせる先生はとても多いですが、ロングトーンは初心者にとっては肩や腕、そして指に強い緊張を強いる事が多く、窮屈で身体全体が強張りがちになります。ウェルナーの教則本も最初は全弓の解放弦の練習で始まりますが、私は以上のような理由から、生徒には最初からロングトーンを練習させる事は、なるべく避けています。しなやかな弓の動きを体得させるのなら、最初は短目の音符から始めるべきです。弾く位置はチェロの場合、弓の下半弓で始めます。自分が心地好くゆったりだと思えるテンポで始めましょう。四分音符40から50位が良いでしょう。
肩から腕の柔軟さがある程度、体得できれば徐々に二分音符、全音符と、長くしていきます。最後に、もっと短い音符、八分音符で肘から先の柔軟さを体得する練習をします。肘から先が自由になっているか、気をつけます。
次は、二分音符と四分音符など長い音符と短い音符を組み合わせて、弓の根元、中程、先、各部の練習をします。そして最後に十六分音符へと進みます。この段階では、手首から先の動きが主体になります。しかし、常に大元である上半身の柔軟さが保たれていなければなりません。
以上全ての動作において、身体全体の柔軟さが保たれているかを確認してください。
以上のような解放弦の練習を、早い段階から左手も加えながら練習していくと、右手と左手の同調が得られやすくなります。
左手あってのボゥイング、ボゥイングあっての左手なのであって、ボゥイングだけ、又は左手だけという限られた現象はチェロだけではなくどんな楽器にも存在しないのです。右手と左手だけでなく身体各部は常に影響しあっています。
全身絶妙かつ最高なバランスの上に成り立つのが立派なチェロのテクニックなのです。
おわり
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