其ノ二
弓をどのように持つか?

これは実に難しい問題です。私にとってもこの問題は、チェロを始めた頃からの課題でした。今でも悩むことがあります。
なぜなら弓は持ち方ひとつでも、ガラッと音色が変わるからです。腕の運動性においても全く変化します。

私が生徒を教える時、最初は極一般的な持ち方を教えますが、生徒がある程度チェロに馴染んでくると、いろいろな方法を提案します。各自体型も違うので、ただ一種類の持ち方だけでは、どうしても無理があるからです。

では実際にどのような持ち方があるのでしょうか。
大雑把に分けて二通りあります。

まず一般的な、親指を弓身とフロッシュの境目に置いて持つ持ち方。
そしてもう一つは、親指をフロッシュだけに置いて持つ方法。

最初の弓身とフロッシュの境目を持つやり方は、現代ほとんどのチェリストが用いている持ち方だと思われます。教則本でも大抵そのやり方です。
この持ち方で、中指をグリップを巻き付けるようにして、またはバイオリンのように中指と親指でバランスをとりながら弾くチェリストも沢山あります。例えばカザルスがそうです。この方法は人差し指と中指で弦にかかる弓の圧力を調整しやすいため、とてもデリケートな音色が特徴です。とにかく弓はあまり深く持ちすぎてはいないことが大切です。
私の師匠でもある、林峰男先生もその方法で弾いておられます。この方法で、中指の先が弓の毛または弓の半月リングに少し触れる程度深く持つ持ち方、これは弓の安定性も高くどのような奏法にも対応出来るので、より一般的だと言えます。曲調に応じて弓を持つ手の深さを微調整出来れば最高です。

全般的に弓身を持つ方法は素早い音形始め、どんな動きにも対応しやすいため一般に拡がったと思われます。
ダニール・シャフランなど弓のかなり先の方を持って弾いていますが、あの持ち方で、よくあのような大きな音が出るものですね。不思議です。

つづく