◎演奏における感情の問題 音楽教師とは? 2

楽器を弾いたり歌ったり音楽をするときには、常に何らかの感情の動きがあるはずです。つねに人間性を伴います。根本的に人間はオルゴールのような演奏は不可能なのです。それを考えると、感情のこめられていない演奏など存在しないことがお分かりになるでしょう。無表情に弾いたつもりであっても、感情、人間性、喋り方などすべての個性が演奏には浮き上がってくるものなのです。ではなぜ先生から君の演奏には感情がこもっていない、などと言われるのか? それはその生徒が抱える曲に対する理解度の低さや、技術面の欠点や未熟さという問題が表面に出過ぎた結果、それに隠れて周りに気持ちが伝わりわりにくくなっている、ただそれだけの理由です。人の話を聞く能力のある人なら演奏を聞けば瞬時にわかりますから。(人の話を耳を澄ませて聞けるような能力は音楽にも通じていて、とても大切な能力です。)

次に必要なことはその曲に対する理解度を深めていくこと、それはつまり、技術面の問題であったり、音楽理論的な問題、または曲が成立した時代背景や演奏習慣、フレージング(簡単に言うと、文章と同じく句読法)、そしてこれは最も大切なことですが、自然の摂理を理解することに他なりません。それらを少しずつ理解し身につけていけば、演奏内容は自然と向上しますし、聞く人に気持ちが届きやすくなるのは言うまでもありません。気持ちがどうこめられたかなどの結果は後からついてくるのです。初心者にとって大切なことは、最初からあまり感情とか表現などのことは考え過ぎない方がいいのです。まず正しい音程が取れているか、正確なリズムで弾けているか、音がかすれていないかどうか、綺麗な音で響いているか、右手と左手のタイミングがずれていないかどうか、音色の問題はある程度好みの問題ではありますが、響いている音と潰れた響かないとの差は明確です。まずこれら基本的な事が自然の摂理として理解しマスターできるように練習することが先決です。それさえできれば殊更気持ちを込めずとも誰が聞いても心のこもった演奏と聞こえるでしょう。
でも音楽には例外が付き物です。そのような特殊な表現が必要な場合は、“良い”先生に教えていただきましょう。いかにしてこのような演奏に対する良い思考的習慣を身につけるか、まあその辺は“良い先生”に導いていただくのが一番の早道でしょう。良い先生に習うということは、この事からみてもとても重要だと分かりますね。それ以前に本人の努力は絶対必要ですが。