チェロの音程を取るとき、重要な目安となるのはやはり開放弦とのオクターブ(2オクターブ、3オクターブも同様)の響きです。
これは弦楽器にとっては基本中の基本の響き。オクターブが合えば楽器は豊かに響きはじめます。

純粋な三度や四度、五度などの響きを体感するのはもちろん大切なことではあります。
しかし、それ以前にオクターブが合わなければ、お話になりません。かなり音程に無頓着な人でもオクターブのずれは不快に感ずるはず。
三度や五度、四度は音律によって微妙に変化しますが、
オクターブや一度(同音)は合っているかズレているかの差しかありません。
したがって音程を合わせるという行為も同じ音程か、オクターブが最も合わせやすいのです。

以前、私が教えた生徒の中に音程が取れず、オクターブや同音の酷いズレが全く聴き取れないという人がいました。
私が試しに開放弦とオクターブ上の音を四分の1音くらい音をわざとずらせて鳴らしたとします。
しかし、その生徒にはきれいに合っているとしか感じられないようなのです。ズレていることに気がつかない。

自分で練習するときなど、多分もの凄く力んで弾いていたのでしょう。私としては不本意ながら、苦肉の策として指板に印を付けて弾かせることを余儀なくされました。

しかし印を外すと途端に弾けなくなるのです。結局、視覚で弾いてしまうので、印では音程感覚は育たないという証拠ではないでしょうか?

教則本のなかには指板にテープを貼ることを奨励しているものもありますが、弦楽器の特性を考えると、私にはこのような行為はとても耐え難いのです。

確かにC(ド)の解放弦など、全くの初心者には音の高低を聴き取るのは困難なことかも知れません。また、C線の音程が聞き取れないような粗悪な楽器もあります。
しかし初心者に音程感覚を身につけさせるのは、まずオクターブのズレを聴き分けさせ
ることしかないと思います。

それはファーストポジション以外のポジションで弾けるようになっても全く同じこと。
他のポジションなら隣の解放弦と同じ音(一度)さえ弾くことができます。
こんな便利な目印ってないではありませんか。

私の生徒でもいくら提案してもオクターブや隣の同じ音を使って音を合わせようとしない、または適当に合わせる人もいます。また教師(私)がうるさいので形だけやっているように見せかける生徒もいますが、実際はチェロの解放弦が共鳴弦として鳴った時の快感を体感し理解させることなど、言葉だけでの説明では無理なのかも知れません。これは自分で気づくしかない。

音を合わせる方法として、必ず静かな音で合わせる。決してごしごし弾いてはいけません。(安物のプロの真似などしてはなりません。)
これが鉄則です。これはチューニングの時でも全く同じ。
ごしごし弾けば逆効果。正確な音程のズレは聴き取れないし、まず音が上ずって聞こえてしまいますからね

普通、音楽にはごしごし弾く要素など全く存在しません。

オクターブがきれいに合わせられるようになれば、あなたもひとランク上のレベルまで上達したことになるのです。

皆さん、耳の訓練は決して怠らないようにしましょう。