チェロ演奏のテクニックを一段階上げようと思う人にとってポッパーのエチュードは必要不可欠な教材です。
まずポッパーにはどのようなエチュードがあるのでしょうか。
まず15の易しいエチュード集op 76―1 ,中程度の難しさのエチュード集op 76―2,そしてハイスクールのエチュード集op 73。以上が主だった作品です。
芸術的にも最も素晴らしいものはやはりop73のハイスクールでしょう。
この作品が書かれたのは19世紀末、当時流行りの半音階的手法がふんだんに使われています。それがまたこの作品集を魅力的に、演奏を一層難しくしているのです。
半音でポジションが上下に動きまわるのはチェロにとって演奏は困難を極めます。
特に早い動きとなるとどうしても半音の幅が狭くなりすぎるため目的となる音にたどり着かなくなってしまいますし、かといって広すぎると目的音を通り越してしまいます。それに重音の減音程や増音程が加わればますますわけが分からなくなります。例えば第13番など良い例でしょう。
そんな時、私はなるべく開放弦であったりフラジォレットを目印にして音を取るようにしています。原始的な練習方法かもしれませんがこれしかありません。しかしシャープやフラットが6つや7つも付けば開放弦やフラジォレットは使えなくなります。そんなとき調性感覚を持って弾くことはもちろん大切ですが、開放弦やフラジォレットを使って音を割り出すのが(テクニックだけを考えた場合)、最も楽かもしれません。また透明感の強い開放弦やフラジォレットを経由して音程をとれば調号の多い調子のくすんだ感じを実感しやすいという利点もあります。
とにかくこのエチュード、弾くのは難しいです。しかし音楽的にもとても美しいので練習するのが楽しくなる曲集でもあります。同じ難しいエチュードでもグリュッツマッハーの24のエチュードなんかよりかは遥かに弾くのが楽しくなりますね。
同じくポッパーの15の易しいエチュードもファーストポジションの困難さや制約を魅力にまで引き上げている点で初心者には最高の教材です。
ファーストポジションの可能性を極めた作品と言えるでしょう。
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