◎ ルドルフ・マッツという名前を聞いたことがある方はチェリスト以外にはそんなに多くはないでしょう。
彼は1901年クロアチア(旧ユーゴスラビア)のザグレブで生まれたチェリスト、作曲家、教育者でチェロのための作品を多数残しました。 1988年没。
彼の作品で特に特に優れているのは多数のチェロのためのエチュード、チェロのための小品、チェロソナタホ短調、チェロ二重奏曲ハ長調、12のチェロ三重奏曲、チェロ四重奏曲二短調だと思います。
これらの曲はすべて西欧には無い東欧(南スラブ)独特の音階で作曲されており、そのメロディーは聴く者の郷愁を誘います。彼のメロディー、特に優れた作品には短調の物が多く、増二度(完全二度+半音)や増四度(完全四度+半音)などの個性的な音程が多く登場するのでより一層そう感じさせるのかも知れません。
ヨーロッパの歴史では常に民族間の衝突による大きな苦しみや悲劇を抱え続けたクロアチア民衆の心の叫びを聞くかのようです。
彼の作品のなかで私がレッスンでよく取り上げるのは12のチェロ三重奏曲(チェロアンサンブルにも使用可能)です。発表会には最適だと思います。
この作品は12曲の小品から成り立っておりますが、三つのパート共に音域も狭く第四ポジションより高い音は一切出てきません。リズムも9曲目(モーメントミュージカル)のように部分的に変拍子の曲も出てきますが全体的には取りやすい曲ばかりです。そしてどの曲もとても豊かに響くのです。簡単で合わせると即良い響きに包まれるという経験は、特に初心者にとっては音楽に対する興味を無くさせないためにも大切な要素であり貴重な経験になると思います。そして何よりも合奏することが楽しくなる曲なのです。
私はマッツの作品の素晴らしさを私の師である林峰男先生から知らされました。
ルドルフ・マッツの作品の多くはカナダのDOMINIS MUSIC社から出版されております。
終わり
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