◎ 弓の中の弓
現在私がファーストボウとして使っているチェロの弓はクリストフ・シェフェールという現代フランスの名工が製作した弓です。弓製作の巨匠ウジェーヌ・ニコラ・サルトリーが残した材料を譲り受け製作しているそうです。
彼は1958年生まれということですから私より二ツ年下。今や巨匠の領域に足を踏み込み押しも押されぬ存在。今後益々活躍が期待されます。
私が彼の名弓を手に入れてから、もう13年くらいになるでしょうか。以来、どの演奏会もいつもこの弓と一緒でした。
音色は柔らかさと輝かしさとを併せ持つ素晴らしいもので、楽器の性能を余す所なく引き出してくれます。
バネも強靭且つしなやかで凄いの一言。どんな要求にも確実に応えてくれるのです。この弓だけは手放せません。
またその姿のなんと美しいこと!弓身は細く、ヘッドは流れるような流線型。眺めているだけで惚れ惚れします。弾くのを忘れそう!どんな物でもそうですが、優れている物は姿も美しいのです。
材料も緻密で引き締まっており、キラキラと輝いてどんな宝石よりも美しい!
重さは80.25グラムで、最初使い始めた頃、私には少し重いかなと思いましたが、使い慣れた現在、全く80グラム少々という重さを感じさせません。普通シェフェールの弓元のラッピングは皮を巻いただけの物を良く見かけるのですが、私のシェフェールは一般的な銀線巻きです。弓のバランスを考えてのことでしょう。
とにかく素晴らしいの一語に尽きる。
現代の弓ということで比較的安価に手に入りますので、何も苦労して何百万何千万円もする高価なオールド弓を手に入れる必要など全くないと思います。
私が手に入れた時は百万円ほどでしたが、現在はかなり値上がりしているみたいですね。やはり人気があるのでしょう。
終わり
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