北野さん

度々宮崎県を訪れるうちに、色々な方と知り合う機会を得ました。そのなかに北野さんという方がおられます。彼は特に印象に残っております。彼は宮崎市内で鍼灸院を営業されておりますが、とでも音楽が好きな方です。演奏会にはいつも聞きに来ていただきました。彼は幼少期に視覚をすべて失われ聴覚の中だけで生きておられます。

いつも私の演奏を楽しみにして下さっていました。
ところがある演奏会の後、お会いすると「今日の演奏はいつもとは何かが違う!いつものチェロの音とはまったく違う!」とおっしゃるのです。
そう。その時使用したのはイタリアの新作チェロでした。

さらに彼はいつものチェロのほうが遥かに良い、次回は前のチェロで弾いて下さい、とまで言いました。
次の演奏会では再び山本さんのチェロで弾いたことは言うまでもありません。
山本さんのチェロの音には独特の艶っぽさや色っぽさという日本人の情感に訴える何かがあります。分かりやすく言えば竹久夢二的とでもいいますか。
イタリーにはない何かがあるのです。私などイタリーの新作チェロなどただ子供が騒ぎ立てているようなうるささしか感じないのですが。皆さんはどうですか?