ピンホールの恐怖

何かと悪戦苦闘するうちに三ヶ月ほど過ぎた頃、
隣の住人が引っ越す事になり、その部屋が空く事になりました。その部屋の方は角部屋で窓が一つ多いため私はその部屋に代わることにしました。その部屋を調べているうち、あることに気が付きました。なんと押し入れの片隅10センチ四方の壁が剥ぎ取られているのが見えたのです。そこを見て私は腰を抜かしそうになりました。その剥ぎ取られた向こう側に約5ミリの穴が空いているのです。なんと、その穴の向こうに私が前に住んでいた部屋内部がまる見えに見えるではありませんか。“しまった、覗かれた!”ちょうどベニヤ板の継ぎ目に穴が開けられていたので全くそれに気が付かなかったのです。私の部屋に時々遊びに来ていた、当時まだ付き合っていた頃の私の妻はよくそのアパートに遊びに来ていたのですが、後年その穴の話をしますと、ほんとに青ざめておりました。
皆さん、建て付けの悪いアパートにはくれぐれもご注意を!

気味が悪くなった私は程なくして、横川駅の近くの新築マンションに引っ越すことにしました。

数年前、昔住んだこの地区が懐かしくなり妻と共に再訪したことがありますが、昔住んだアパートはすでになく、町の雰囲気もガラッと変わっており、ただ昔からあったキリスト教徒の墓地だけが昔のままで、それだけが昔建っていたアパートの場所を示す唯一の目印となりました。