4月28日、コンサートでバッハの「G線上のアリア」をチェロで弾くということもあって、何かその曲が入っているCDはないかと、それとなく中古CD屋を物色していますと、ちょうどアルト・ノラスというフィンランドのチェリストが弾いているチェロ小曲集を見つけ早速購入しました。
CDはそれ自体がひとつの作られた物(脚色されデフォルメされた作品)であり商売を目的とする商品です。ですから実際の演奏とは全く異るということは言うまでもありません。
それでも色々、参考になることがあったので紹介します。
 
このCD、1970年代に録音されたということですから、かなり古い録音に属します。そして廉価盤シリーズの一枚として売られているということは昔のLP時代からよく売れた録音なのでしょう。
一枚にチェロの小曲10曲とシューベルトのアルペジオーネソナタまで入っています。お買い得!
 
その演奏については、あくまでもCDを聴いてのことですので単純に判断する事は難しいということを念頭におかなければなりませんが、そのCDだけを聴いた限りでは音楽面で見るとかなりな退屈さを感じました。分かりやすくいえば全てのCDを足して割ったような演奏とでも言いましょうか、、
とにかく平坦。ヴィブラートも一色。
しかしノラスというチェリスト、左手の正確さとボウイングの巧みさは凄いですね!
左指はどうしても歌ったりすると、ポジション移動を含めて動きが緩慢になり勝ちですが、このCD、特に速い部分では機械のような正確さを感じることができます。ゆったりした部分でもしっかり指が上がっている。これは私の生徒にもよく言っていることですが、しっかり指があがりさえすればはっきり弦を押さえることが出来る。これはチェロ演奏の基本です。その面からこのCDを聴くととても勉強になります。
 
さて肝心のG線上のアリアですが、最初聴いて、あれ?と思いました。よく聴いてみると、元の曲とは調子が違うのです。原曲はハ長調ですが、このCDでは二長調で弾いているのです。
1音上がるだけでこれだけ色彩が変わるのかと、少し驚きました。
ハ長調特有の安定した雰囲気は影を潜め、二長調の持つ明るさのみが前面に出すぎた印象があります。勿論、二長調で弾く方が遥かに弾きやすいということは言うまでもありません。
弦楽合奏のヴァイオリンパートをチェロで弾くのですから編曲物ということには変わりがないのですが、せめて原曲の雰囲気ぐらいは残したいものですね。
とにかくこのCD、色々音楽を考えさせられる、なかなか面白いCDでした。
ライナーの絵画も多分セザンヌでしょう。とても素敵ですね!IMG_20180403_120751