生徒の楽器の状態は常にチェックし、いつも最良の状態でレッスンを受けさせる。
これは教える方にとってはとても大切なことです。
上級者にはそれほど問題にはならないのですが、こと初心者に関しては楽器の状態にまではなかなか気が回らず、放っておくと酷い状態でも平気で弾いてしまっていることが結構多いものです。楽器の取り扱いを教えることもレッスンの一部分。もしもこれを怠っていると、言いたいことがまったく伝わらない、弾く方も弾きたいことが実現できず、あるいは無意味な練習をさせてしまうという事態にもなりかねないからです。

まず生徒の楽器によく見受けられる不調として、量産品のチェロ、特に新品などの場合は大抵ネックの角度が不安定で、弾いているうちに指板が下がり駒のほうが高くなってしまいます。
こんな状態を見過ごしていると、高い弦圧のため弦上に左指を正しく置けない、さらに弓を弦に押さえつけてしまうためチェロが美しく鳴らないということになってしまいます。左指を必死で押さえると弓も自動的に弦に押さえつけて弾いてしまうものです。
これは速やかに楽器店に修理を依頼しなければなりません。

次に多いのはウルフトーン(ある種の唸り)の問題です。これにはいつも悩ませられます。良く鳴る楽器ほどウルフトーンがよく出るものですが、初心者にはなかなかこれを扱うのは難しいものです。ウルフトーンは弾く場所によっても強く出たりたり弱かったり、、場合によっては音が裏返って使い物にならないことすらあります。対処法としてはウルフキラーをテイルピースと駒の間の弦に取り付けるわけですが、これをウルフが止まる位置に設定するのはなかなか困難なものでもあります。これを生徒がその都度、最良の位置に設定させる習慣を身に付けさせるのは少々手間がかかります。
しかし根気よく教えていけばやがては上手くいくようになるものです。

次に最も頻繁に起こるのは駒の歪みや曲がりです。これも気をつけていないと、とんでもないことになります。
これは、チューニングの時、ペグを回すことによって弦が引っ張られペグ方向に傾いてくることがとても多く見られます。駒はいつもエンドピン側に直角に近く真っ直ぐ立っているかを確認します。一旦傾いてしまえば修正が困難になります。また下手に触れば駒を倒してしまい楽器を傷つけてしまいますので傾いた時は必ず教師自ら調整します。また生徒自身にも毎日駒の傾きを確認することを習慣付けるよう促しましょう。理想的にはメジャーで毎日駒から上駒までの弦長を測ることを習慣にすれば良いでしょう。

最後に弦や弓の毛を張り替える時期を見極めること。
弦に関して生徒はスティール弦を張っていることが多く、切れないものですから放っておけば何年も張り替えないという事態にもなりかねません。私の感覚ではスティール弦なら半年でも使いすぎだとは思いますが、、、。
弦も毛も半年経てば弾いても弾かなくても取り替えてしまうという決まりごとにしてしまえば良いでしょう。実際、そんな決まりごとにしている先生を何人かお見かけしたことがあります。

以上のように楽器は弾く人にとっては体の一部分。教師はその体の健康を見守る保健の先生の役もこなさなければならないのです。
当教室では手ぶらでレッスンに来ることも可能だとホームページには案内させていただいてはおりますが、理想としては三回に一度くらいは自分の楽器を持参し楽器の状態を見せていただくのが最高です。