◎其ノ四
実際の練習
半音は微妙で繊細な存在です。不安定とも言えます。薄氷を踏むような、とも表現できるでしょうか。
全音と混じり合った場合は特にその個性が際立ちます。ヴァーグナーの音楽を聴いていると、半音の用い方があまりにも繊細で素晴らしく、ホントにしびれてしまいますね!
そんな半音をいかにして弾けば良いのでしょうか。
いつも何かイメージを持って弾くのが大切だと前にも申し上げましたが、実際にはどんな練習方法が考えられるか。
まず具体的に、音階に於ける半音に表情を与えることを考えてみましょう。これで音階の意味が(自分なりに)発見できるかも知れません。
ハ長調の音階をゆっくり下から上に1音ずつ弓を反して(デターシェ)で弾きます。
次に半音の部分、ミとファの間、シとドの間をスラーを付けて弾いてみます。 スラーの最初はたっぷり表情を与えて、スラーの終わりは余韻や響を残すようにして弾きます。決して終わりが強くなってはいけません。その時ヴィブラートをつけても良いかも知れません。
(音楽を言葉や文章で説明するのはホントに難しいのですが)、特にシの音はドの音に引っ張られるように、又は吸い寄せられるように弾くことができれば最高です。しかしこの時、ミやシの音が上ずってしまうのは良くありません。表情を付けようとして、やむにやまれず音程か上がってしまうのはしかたがないことですが、単純に音程だけを上げて表情を付けようとするのは間違っています。
表情を付けるためにミやシの音の前にかすかな間や隔たり(インターバル)を与えても理解しやすいかも知れません。どんな時にも大切ですが、大事な部分の前には少し分けて区別してやると、その大事さが浮き彫りにしやすくなります。
実際の音楽作品では例外は多いのですが、
音階の下りは上りよりも表情は穏やかです。
どうですか、音階が少しでも音楽らしくなったでしょうか?
では次に、最初に弾いた時のように、スラーは付けず全部をデターシェで弾きます、その時半音の部分にスラーを付けた時のように表情をもって弾けたら最高です。
さらにこの方法をいろいろなテンポで弾いたりリズムを付けて練習すると効果があります。
以上の方法はひとつの例で、音階を無機質にならず、各自感情豊かなイメージを持って弾かなければならない、ということには変わりありません。音階の意味を自分なりに探る一助になれば幸いです。
終わり
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