◎5 ワインの話

さて話はワインに変わります。

ワインは実に奥が深い飲み物ですね。
私もワインは好きでよく飲みますが、なにせビールに比べると良い物になるととても高価になります。私のような貧乏人にはチリ産の安い物が合っています。でも最近高いワインと何の遜色もない良いものがたくさん出回っていて貧乏人には嬉しい限りです。
安い物ばかり飲む私にはワインについてなど恐れ多くて何も語る資格などないのですが、若い頃から親しんてきた酒ですので私なりに思い入れはあります。
ワインとの最初の出会いは、まだ子供の頃に親に舐めさせてもらった“赤玉”でした。あの濃いルビー色はいつまでも眺めていられて、今でも赤ワインを飲む度にその色に魅せられた記憶が蘇ります。
お酒を飲める年頃になってもワインは特別な存在でした。その頃は今のようにチリ産のような安くて美味いワインなど出回ってはおらず、安いワインといえば日本産。それでも一本千円はしてました。やはりワインは高級品だったのです。
留学していた時もワインはよく飲みました。ハンガリー、スペイン、南アフリカ産の物はとても安くて美味かった。

◎ベートーベンとワイン
“コーヒーの話”でもふれましたが、ベートーベンもワインが大好きでした。
相当な量を飲んでいたようで、彼の遺髪を検査した結果かなりの量の亜鉛が検出されたようです。その亜鉛とはワインに添加する甘味料からくるそうで、その量は毎日三本は飲まなければ蓄積しない程の量だったそうです。したがってそこまで飲んだとはあまり信用できない話とされていますが、彼にはこんな逸話があります。
ある日食事に招待された彼の友人は、ベートーベンが食卓に五本のワインを両腕に抱えて持ってきたのを見てビックリしました。さらにその内一本をベートーベンの席に、あと四本を友人の席に置き、さあお飲み下さい!と言われた時の友人の驚きはピークに達しました。
この話からも、普段からたくさん飲む習慣は彼には確実にあったと思います。実はベートーベンのお母さんの実家はモーゼル地方のワイン醸造所で、彼も生涯そのワインを飲み続けました。子供の頃からワインに触れる機会は多かったのでしょう。その醸造所のワインは今でも生産されていて日本でも買うことができます。
リースリング種の葡萄で作られたそのワインは少し甘く新鮮な葡萄のジュースといった雰囲気です。
一般的にベートーベンの辞世の句は「諸君、喝采したまえ、喜劇は終わった!」というものですが、実際に最後に話した言葉は「ああ、遅すぎた!」だそうです。なにが遅すぎたのか、実は注文したワインか未だ届かないことを聞いて、それが心残りだったというのです。何と人間臭くて良い話でしょう!
死の床でも彼の唇を潤し続けたのは白ワインだったのです。

私の辞世はどんなことを言うのでしょうか。多分ボケて変なことを言うのでしょうね。

おわり