四月に入り、入学式、一般企業の入社式も終えようとしているこの季節、若い方々はさぞ希望に胸を膨らませていることでしょう。
私も昔を思い出しますねぇ!

こんな時期の過ごし方や心境は人それぞれ、千差万別だと思います。一概に皆がみな希望に燃えているとは言えないと断言できます。元々活発で前向きな人は問題ないでしょうが、中には内向的で引っ込み思案、新しい生活が憂鬱で不安、怖くてたまらないという人も絶対いるはずです。自分はそうだとおっしゃる方、さぞお辛いことでしょう!お見舞い申しあげます。
社会人になれば人との付き合いの面で悩んだり、人間の暗黒の部分を見せつけられ理想と現実との間で悩むことなど茶飯事。人生にとっては必要というか避けて通れないことかも知れません。学生時代の悩みとは全く質が異なります。
しかし必要と言われても辛いものは辛い、どうすればいいのだ?と言われそうです。

そんな生活を続けるうえで、嫌な事を受け流すことができないとストレスが溜まって精神がボロボロにやられてしまいますよ!
実際、私がそうでした。ショックの方が多く、夢と現実があまりにも異なり過ぎていたのです。私の仕事、特にオーケストラ社会などでは色々な面で普通の社会とはかなりズレています。これは極論ですが、変人の集団とも言えるのです。
普通の人が浮いてしまうのがオケという特殊な人の集まり。音楽業界皆そうです。
そんな中、元々内向的で神経の細かった私は常に鬱状態に陥っていました。
それから30数年、オーケストラを辞めた後も生活のために必死でチェロを弾き続けました。精神的には殺伐たるものへと歪められた方向に鍛えられたかも知れません。

今、まさにそんな苦しみを感じている方、
特に心が鬱状態にまで追い込まれてしまったという方!
私の乏しい経験から申しあげますと、大切なことは鬱で悩んでいる時は鬱状態から脱却しようとか立ち直ろうなどと思わないことです。成るがままに放っておくこと、世間では色々言われたりしますが結局これしかありません。
家族や友人のアドバイスも全く無力です。
特に鬱病になれば励ましや激励の言葉なども細心の注意をはらって使わなければならないという話は皆さんご存知だと思います。

そんな苦しい時期、私は苦し紛れにいつも心にゴミ箱をイメージしていました。嫌なことがあると何でもそのゴミ箱に投げ入れるのです。そして蓋をする。

それは正常な精神を封印し心に蓋を作って生きるわけですから、表情も無表情になります。つまり心を意識的に麻痺させるのですね。これはある意味、怖いことではありますが究極的にこれが最良の方法なのです。
やがてゴミ箱が満杯になれば心は酷い鬱状態になります。これは正常な反応だと思います。この反応を無理に封じ込めるのはいかがなものでしょうか?それは自殺に追い込んだり、精神の崩壊につなが可能性もあるからです。
そんな症状に至る前に心療内科を受診しましょう。
鬱状態が極限に達した時、私も初めは睡眠導入剤など色々な薬を処方されるがままに服用した時期もありましたが、次第に効き目は感じなくなり、遂に効き目が現れないということに至りました。それがかえって精神的なプレッシャーとなり怖くなり、また別のより強い薬を処方してもらう。まさに負のスパイラルとなってしまったのです。
ですから、ある程度通院するとタイミングを見計らって自主的に薬は止めるようにしましょう。さもないと薬に依存するような身体になってしまいます。
 
精神的に弱っているとき、誰に悩みを相談しても解決など期待はできません。
本来、ただ黙って寄り添ってくれる存在さえあれば症状は軽くなるものですが…。そんな弱い(繊細な)人間を世間は、なにを女々しいだとか、甘えるななどの一言で片付けてしまいがちです。これはとても危険なことです。一人の人間を追い詰め無にしてしまうことにもなるのです。この世の中、そんな強い人間ばかりではありません。その辺のところは“お強い方々”、理解してくださいね!
もしも、仕事の辛さや人間関係で心のゴミ箱が満杯で精神的に限界だと感じた時は、思い切ってその仕事を辞めるというのもひとつの選択肢だと思います。周囲の人もそれを静かに見守ることができるくらいの寛容さを持つべきです。それも愛情ではないでしょうか。なにも極限まで我慢する事だけが美徳だとは思いません。

これから五月病の季節がやってまいります。お若い方々、特に気の弱い方、来年の今頃はもっと強くなった姿でまたお目にかかりましょう。

終わり