◎其ノ一
チェロの構え

今日は身体に楽で、かつ合理的なチェロの構え方について考えてみます。

まずチェロを弾く椅子ですが、リラックスできることが目的の低く後ろが下がっているようなものは絶対に避けます。そして腰掛けた時、腰から膝はまっすぐか、ほんの少し下がる程度のものが良いでしょう。
椅子の角度は、ホームセンターに売っているいろいろな厚さのゴムのブロックを使うと簡単に調節できます。後脚と床の間にそれを挟みます。
チェロ奏者は一旦外に出るとどんな椅子で演奏させられるかわかりませんので、私はいつも厚さ1センチ、幅は縦横10センチほどのゴムブロックを持ち歩くようにしています。後ろが下がっている椅子は後ろの脚と床との間にそのゴムブロックを挟むと、構え方は少し楽になります。
私達プロが仕事で出くわす椅子は、大抵が低いパイプ椅子です。
それもほとんど後ろが下がっています。何か方策を考えないと必ず腰を痛めますので注意が必要です。最近ホールによってはオーケストラ専用のオーケストラチェアーを導入している所も増えてはきましたが、相変わらずパイプ椅子が主流ですね。
高めの椅子や後ろが下がっている椅子は浅く、低めなら深く掛けて結構です。

さて、チェロを取り出します。
エンドピンはまだ出さない状態から始めます。
まずチェロを身体の中心に構えてみます。
すなわちチェロの下部を両膝に挟み、スクロール(渦巻き)の後部が顔面に当たる状態です。
これが楽器を中心に構えるということです。
次にそのままネックを顔の左側に置いてみましょう。この時、膝と左上半身の間で、ちょうどチェロが揺り篭に入って揺られているようなイメージを持つことが大切です。
ネックが顔の左、左半身に位置するとチェロの表が自然に右方向を向くことを確認します。
次にエンドピンを少し引き出し、先程の揺り篭のような感覚が維持できる限界の長さを設定します(椅子の高さによっても僅かの差はあります)。チェロのボディー上部、ネックのボタンがみぞおちの少し上にくるように置いてください。
ネックと鎖骨の間に左手が通るほどの隙間があることが大切です。時々チェロのネックがほとんど肩に触れるような弾き方をしている人を見かけます。身長の低い人や、身長と脚とのバランスを全体的に見て、座高の方が低い人(脚が長い人)に多いのですが、この弾き方だと上半身や左手、特に低いポジションが窮屈でボウインクにも悪影響を与えてしまいます。逆に構える位置が上過ぎるとボウインクが窮屈になります。弓の下半弓は特に窮屈で上半弓との間に段差ができてしまいます。妥協できる点を見つけるのは良い教師の協力がなければ、かなり困難でしょう。

続く