◎ 1 人間の本能

スポーツ、囲碁将棋、料理、菓子、子供の成績…等々、どの世界でも行動や物にランクをつけることが今や人の世界では当然のことです。ランキングのない社会など想像もできません。
どこそこの飲食店がミシュラン五つ星だとか誰がオリンピックでメダルをとったなど、
もっと身近な例では、このスーパーは近所では一番安くて品が良い、年齢詐称などを見てもわかるように、歳は若い方が良いのです。学歴詐称もしかり。形は違いますがこれらも立派なランキングです。この人間社会全て(仕組みは曖昧ではありますが、猿の社会もある程度そうです)がランキングだけで成り立っていると言っても過言ではありません。
こと音楽の世界でもコンクールは年毎に盛んになりつつあります。クラシックに限らずコンクールで優勝して人より優位に立ち、良いチャンスに巡り会い、より良い仕事を手に入れ金儲けがしたい。目立ちたい。音楽界でもランキング社会です。

物事に優劣をつけたがる、これはある程度人間の本能であり特性でもあるので、どうしようもない問題でもあります。
良い物を身体に取り入れたい、つまり人より良い暮らしがしたい、いい物が喰いたい、とにかく人より優位に立ちたい。つまり欲望。これは全て基本的に生命を維持し優れた種を子孫に残したいという人間の生存本能の表れそのものなのです。そしてそれを求めて闘争心を燃やす。また、自分とは考え方が異なるというだけで徹底的に排除しようとします。基本的には他の動物と大差ありません。

しかし、他の動物にはない人間ならではの美点もあります。物事に美を感じ、より良い芸術を創造したい、これは霊長類である人間にしか見られない美しい本能の表れです。この独特の本能こそが人間をここまで発達させた原動力にもなっていると思います(ある意味、堕落させたとも言えますが)。

しかし、優秀な生き物である人間、たた単に優れた物だけでなく、もっと些細で一見劣るような物事にも目を向け、そこに美を感じることが出来るのも人間だけに許された特権でもあります。
それぞれ個性を感じ、そこに良さを感じる事が出来るのも人間。
優れた物、飛び抜けた物だけしか目に入らないようでは、他の動物とは何ら変わりがありません。今の商業主義に踊らされ本能のままに行動している人間を見ているようです。それらの人間は考えることを放棄し人間らしさまで見失っているとしか私には感じられません。猫など人には絶対に媚びようとはせず、誇り高く生きています。人間も見習うべきです。

人間だけの特権を取り戻す。
どんな物にも美を感じ目を向けることができることこそ人間が人間であることの由縁でもあるのですから。

次に音楽の世界をランキングの面から見てみたいと思います。

続く