◎ 日々の仕事が忙しくチェロの練習がなかなかできないとおっしゃる方も多いことでしょう。
毎日たとえ10分でも弾くことができれば良いのですが、疲れて帰宅すると練習する気力も萎えてしまっていることが多いものです。

しかしチェロをはじめ、特に弦楽器は毎日弾かなければ、楽器演奏に必要な筋肉は育ちません。結局それが上達することに繋がっているのです。
音楽的な向上は、もちろん弾くことも大事ですが、普段いかに音楽を自分なりに理解できているかによって変化するものであって、何も考えずただゴシゴシ弾くことだけが全てでは決してありません。
その意味から理屈として、音楽的には楽器無しでも上達するということも有り得ます。しかし、本当の理想的な上達とは精神と肉体とがバランス良く向上することなのではないでしょうか。

さて、筋肉を鍛えるというと大抵は筋肉の強さを鍛えることばかりをイメージしがちですが、楽器演奏にとって本当に必要なのは、そのしなやかさと柔らかさなのです。

時々、楽器が上手くなるには強い筋肉が必要なのだと、重いダンベル、果てはバーベルまで上げる訓練、さらには腹筋の鍛練までして身体を鍛えている人を見かけますが、あれなど全くのナンセンスです。あれでは楽器演奏とは全く関係ない筋肉ばかり鍛えているに過ぎず、肝心の楽器演奏に必要な筋肉はかえって硬くなってしまうこともあり、全く時間の無駄と言わざるを得ません。
その時間をなぜ楽器の練習に使わないのでしょうか。それが不思議です

やはり楽器演奏に必要であるしなやかな筋肉は楽器演奏によってでしか鍛えることができないのです。
その事実をもっと自覚するべきです。

筋肉のしなやかさ。これは楽器を弾かなければ日々どんどん硬くなります。その意味でも、毎日弾くことが大切なのです。私達プロで弾いている者でも、ほんの一週間もチェロを練習しなければ、もう指はガチガチで他人の指で弾いているようになるものです。
そのためにも、萎える気力を振り絞りチェロを弾く日々を過ごしているのです。

仕事で忙しいという方も、日に一定時間チェロを触るという習慣を持つようにすれば良いでしょう。夕食前のルーティンのように。
そして短い時間でも、ただ楽器に触るだけでなく、少しだけ今弾いている曲のことを考えてみましょう。

終わり