◎ ボウイングは一定方向に常に真っすぐ、根元から先までベターッと、常に均等な音質で弾かなければならないと考えている方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。又は、そのように教えられた方も多いでしょう。
しかし、弓の運動は弦楽器においては呼吸と同じようなもの。人の呼吸も決して一定ではないのと同じように、弦楽器も音楽の内容によって雰囲気は逐一変化するものなのです。一定ということなど有り得ません。人も息を吸うときは緊張を伴いますし、吐くときはリラックスするものです。
動作の種類によっては呼吸の途中で息を吸い直したり吐き直したりして次の動作に備えるものです。いつも均等ということなどありません。
ですから、いつも均等にという考え方は少なくとも音楽においては捨て去った方が良いと思います。
左手はどんなにな滑らかにポジションを移動させても、移動させる以上、指は必ず弦上を滑らせなければなりません。滑らせず指を一旦上げて音を取り直したとしても滑らかには移動できないでしょう(音が休止符で途切れたり、フレーズの変わり目ではその限りではありません)。弓を普通に均等な圧力とスピードで弾けば必ずポルタメントは入ってしまいます。
そこで、無意識にかかるポルタメントのない滑らかなポジション移動を実現するためには、やはりボウイングのコントロールを理にかなった方法で行うしかありません。こんな時、スピードや弓の圧力が異なるいわゆる不均等なボウイングが力を発揮します。つまりポジションを移動させる途中で弓の圧力を抜いてやれば良いのです。また場合によっては弓のスピードを落とすということも考えられます。
例えば、弓の圧力を極限まで落とすとポルタメントは入りませんが音はかすれ繋がりません。同じように弓のスピードを極限まで落とせば弓の動きは止まると同時に音も止まってしまいます。
これらの度合いを自分のセンスによってコントロールしてやれば良いのです。
実際に、これらの動作が理想的に融合されればポジション移動など意のままです。
もう悩むことなどありません!
教材としては音階練習をする時に実践するのも良いですし、フォイヤールの“毎日の練習”という本の中にはポジション移動のための課題がたくさん出ています。参考になさって下さい。
終
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