広島交響楽団のオーディション

話を進める前にまず広響のオーディションのことも少しお話しておきましょう。
私が広響のオーディションを受けたのは卒業の前の年、1978年10月のことでした。
とにかくオーディションでは何か強いインパクトを審査する者に与えなければならない、という大学の教授の意見を取り入れ、私はサン・サーンスの協奏曲イ短調を弾くことにしました。この曲など今から考えるとそんなに“はったり”を効かせるような曲でもないように感じるのですが、その時はまあそう感じたのでしょう。
その当時コンチェルトなどゴルターマン以外は全く弾いたことがなく、弾くことには非常に苦労しました。今から考えるととても考えられないことなのですが、弾き方が分からないので、とにかくレコードのコピーに徹したのです。同学年のピアニスト真子幸子さんにピアノを弾いて頂きました。

という訳で、私達二人は広島に乗り込んだのです。
オーディション会場は平和大橋たもとのNHKのスタジオ。チェロはたしか三人受けていたと思います。演奏はコンチェルト以外にオーケストラスタディ、つまりオーケストラのチェロパートを初見で弾くことです。ベートーベン交響曲第五の第二楽章からとブラームスの第一交響曲の第三楽章が出題されました。学生時代試験で皆の前で弾くことはあったので、オーディションではそれ程緊張はしなかったように覚えています。
さらに、月並みな面接を受け、なんとか私一人オーディションに受かることが出来ました。
そして結果は当日発表され、晴れて私はオーケストラプレイヤーになることができたのです。
先程もお話したピアニストの真子幸子さんには大学一年生の頃からずっと伴奏していただきとてもお世話になりました。現在も盛んに演奏活動を続けておられるようです。また再びデュオなど共演させて頂きたいと思っております。オーディションの時もとても上手に弾いて頂きました。