特に若いチェリストや最近チェロを習いはじめた方は、添付したチェロの写真に装着しているようなテールピースをご覧になったことがあるでしょうか?
これは、昔、ヴィーンのThmastik社から発売させていたアジャスター付きのテールピースです。全体が金属で作られています。
 
 
私がチェロをはじめた頃、テールピースと言えばアジャスター無しか、このThmastikのものしかありませんでした。
塩化ビニール製のアコースティクスという製品も当時からありましたが、主流はこれでした。
現在は色々な会社からとても格好の良いテールピースが売られています。
しかし、音色や強度、性能面からみると、私の感想では、どれも一長一短で満足いくものは見当たりません。
そのため、私がいつもコンサートで使っているチェロにはアジャスター無しの製品を装着しています。
 
 
これは全体が金属でできているので、木製のものと比べると少し重く、その重さのせいか音色も重いというか、独特の暗さがあります。
この音色がまた魅力なのです。
この音はその無骨というか風変わりな形状にもよるものかもしれません。
そしてなによりもこのテールピースを着けると、高音から低音までのバランスが良くとれる。これは最も優れた特長でしょう。また造りがとてもしっかりしていて、ネジの調子も素晴らしい!
最近の製品でよくある、格好は良いのだがネジの調子が悪い、強化プラスチックでできた部品が割れる、等といったトラブルは全くありません。
 
最近、優れたこのテールピースはなぜか、全く姿を見ません。
この写真にあるテールピースも、弦楽器職人の山本正男さんの工房の片隅に眠っていたものを譲り受けてきました。
 
なぜ、売られなくなったのか?
 
やはり、添付した写真で見るように、その不恰好な姿のせいでしょう。
なんと言っても、大抵は見栄えの良いものを選びますからね。音色も最近は、暗く重厚なものより明るいもの、言い換えれば、チャラチャラしたものが受ける傾向はたしかにありますから。
 
このThmastikのテールピース、見つかれば、いつも使っているチェロにも着けてみたいと思っていますが、、残念ながら今のところどこにも見つかりません。
terupisu